「帰還町民」の暮らしの下支え、「避難町民」への寄り添い。双葉町長インタビュー

○「戻らない6割」の中で、豊かな暮らしを創る。

 昨年6月から今年の3月まで放送された「次世代に伝える。原発避難10年目ラジオ」。その続編を「11年目ラジオ」と改め放送することになった。4月17日は、福島第一原発がある双葉町町長、伊澤史朗(いざわしろう)さんに話を聞いた。

 伊澤さんは震災から2年後の2013年に双葉町長に就任した。それから現在に至るまで町の復興に尽力し、今年6月には避難指示区域の解除に努めた。しかし、昨年8月に行われた双葉町住民意向調査によると「戻りたいと考えている」が11.3%、「まだ判断がつかない」が24.8%、「戻らないと決めている」が60.5%、「無回答」が3.3%だった。

戻らないと考えている人が大半である現状で、帰還者が豊かな生活を送るために必要なことは何かと尋ねた。「世代によってニーズは違う。特に高齢者が多いため、それに合わせた施策が求められる」と話す。避難先での生活に慣れ親しんだ子どもや若い世代より、長い人生を故郷で送った高齢者の方が、帰還意志が強い傾向にある。そのため、病院の数を増やしたり高齢者同士が交流する機会をつくることが求められるという。震災前の生活を完全に取り戻せないが、町で安心して生活するための暮らしのインフラ整備は大切だと思った。

 

○「避難している町民」それぞれに寄り添う。

 また、リスナーに伝えたいことは何かと尋ねると「避難者は様々な問題を抱えている。そのため、避難者を突き放すのではなく、その人の立場に寄り添って物事を考えてほしい」と話す。

東京電力から賠償金を受け取る避難者が、「お金をもらっていい気になりやがって」などと周りから非難されることがある。賠償金は、原発事故によって住居や親族を失った人に対し、損害賠償として渡されるお金である。決してその人が得するためのものではない。望まない避難を強いられた人を冷たくあしらうのではなく、「もし自分が同じ立場だったら」と想像し、その人を受け入れることが大切だと思った。(櫻井)