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原発事故で奪われた「夢のようなくらし」。原発や社会問題とどう向き合うのか

 2025年8月28日放送の「次世代に伝える。原発避難15年目ラジオ」のゲストは、原発事故避難者の内田啓子さん。福島での経験や原子力利用に対する考え方、原発事故との向き合い方などを伺った。

栃木県出身の内田さんは、人生のほとんどを関東圏内で生活してきた。しかし、当時4歳と1歳半の子どもの子育てに良い環境を考え、2010年11月に福島県田村市の旧都路村(現都路町)にIターンをした。自然豊かで、優しい地域住民にも恵まれていたと内田さんは懐かしそうに、嬉しそうに語った。

2011年3月11日、東日本大震災、原発事故が発生。旧都路村は原発から30km圏内だったため、避難指示が発令された。移住からわずか4か月後だった。

 

「なぜ原発事故で私の暮らしは奪われたのか?」という疑問

 3月12日、内田さんは旧都路村での「夢のようなくらし」を離れて、家族と内田さんの実家がある栃木県に避難した。その後福島に戻って仮設住宅に入居するか、また別の場所でIターンをするか迷ったものの、益子町に住むことにした。しばらくして子どもたちは幼稚園へ入園、夫も新しい仕事を見つけた。忙しさが薄れてくると、内田さんはふと「なぜ福島に東京電力の原発があるんだろう?」と疑問に思った。

 同時に、長崎や広島に莫大な被害を生んだ原子爆弾と同じものが電力として使われていることへの疑問もあり、納得できる答えを探そうと本を読み始めた。

当時の内田さんには難しかったが、それでも手に取れる範囲で本を読み続けた。しかし自分の疑問に対して納得できる答えはどこにもなかった。「なぜ私がこんな目に」と怒りが湧いてきた。

だが調べていくうちにわかったことがある。それは、原発事故ではなくても日本や世界には公害や戦争で力が弱い人々が被害に遭っているという社会の実態だった。

 

原子力利用は続けてよいのか、原発は再稼働すべきか

「原子力利用は産業として成立する」という意見もあることは承知だが、使用済み核燃料や放射性廃棄物の最終的な処分方法や場所も決められていないことを内田さんは懸念している。内田さんは茨城県水戸市と隣接し、再稼働に向かっている東海第二原発についても触れた。「30km圏内には100万人も住んでいる。もし原発事故が発生したら、100万人はどう避難するのか」「電気はすごく必要だけど、原発がある地域の人たちだけにリスクを押し付けていいのか」「コンセントの向こう側にどのようなことが起きているのか、思いを馳せることも必要」と話す。

 栃木県は、銅の採掘により渡良瀬川流域に被害が及んだ足尾銅山鉱毒事件で公害に苦しめられた過去がある。経済活動が被害を及ぼすという点では福島県と栃木県で共通しているが、「簡単に原発事故の避難者と同じ気持ちになれるわけではない」と内田さんは語る。避難者の状況や気持ちを理解し寄り添うことの困難さを感じる。

 

人々に残り続ける原発事故。「しんどさ比べ」ではなく、共にねぎらい、考える

「多分福島には戻らない」と内田さんは話す。しかし、福島での生活を「人生の中で、静かで平和で美しい時間を持てたことはすごくよかった」と涙ながらに振り返った。

福島で生活していたときの家は未だに残っているが、福島には親戚や友人もほとんどいないこと、子どもも大きくなったことが「福島に戻らない」決断の理由だが、内田さんは割り切れない。「簡単に原発事故を消化せず、複雑さを抱えて悩みながら生きていくのが私の正解」「帰れるか帰れないかという2択では無くなっている」とも語っており、原発事故発生から15年経った今もこれからも、原発事故は内田さんの人生に残り続ける。

内田さんは「被災者間で抱えている苦しみやその深さはそれぞれ違う」という。また「どちらがしんどいか、しんどさ比べに目が行きがちだけど、そうじゃない。避難指示が出たから出てないから、ではなく『みんな本当に大変だった』『辛かったよね』とそれだけでいい」という。苦しみを比べずにお互いにねぎらい合う重要性を感じている。

内田さんは「暗くて辛いことでも大人の責任として携わっていかなければならない」とも語る。それは不安や恐怖を生みだし生活を脅かす。経済的にも精神的にも余裕がない現代人。自分のことで精一杯だ。それでも内田さんは「自分が潰れない程度に手を離さないで」と、自分を保ち、時に休みながらも原発事故をはじめとした社会問題を考え続けていく姿勢を見せた。

 

編集後記

 大学の授業やラジオインターンを通して、原発避難について学ぶ機会は数多くあった。他にも様々な社会問題や政治、国際情勢など、幅広い事象に触れた。しかし大学の外、ラジオインターンの外に出てみると私の不安や心配をよそに、何も危機が起こっていないように世の中は平和な顔をして動いている。暗黙の了解で、政治や社会問題の話は未だにタブー視される。いつ自分が、がけっぷちに立つか分からないのに。ずっと自分に権利があり、平和でいられる保証は一切ない。だから私は、誰かと気軽に政治や社会問題を話したい。一人で抱えきれない不安や心配を共有したい。論争をしたいわけでも、不安を煽りたいわけでもない。政治や社会問題を話すことは、私たちの生活を話すことだ。

 

これからもおいしいごはんを食べて、お風呂に浸かり、ゆっくり寝たい。映画やYouTubeを見て、一人で旅行に行きたい。大切な人たちと幸せに過ごしたい。そのために、私はこれからも内田さんのように自分が潰れない程度に知り、学び、話す。ラジオ学生最後の回だったが、ラジオインターンで培った好奇心と学び続ける姿勢はそのままに、またいつかラジオに出れたら嬉しい。(ラジオ学生 立花ひまる)

 

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https://youtu.be/Qm_UwbQ8Em4?si=ZlCr-FQUHNMpVJaT