忘れたくらいの久々の日本酒をとっても待ち遠しく黙って座っている。おばあちゃんたちの夕暮れ酒場

「お茶はいらない!」

 

「とちぎさんが、お酒飲ませてくれるげといね(くれるそうだよ)」。

 仮設の集会所の外に、何度か来ているおばあちゃんが散歩していたので、足湯と、夕暮れ酒場屋台の事を伝えました。しばらくしてお友達を連れて足湯をしてお茶していました。

 屋台の時間までまだ少し時間があったので、おかわりの飲み物を聞いたら「お茶はいらない !」ときっぱり。

「日本酒を飲みたいげわ」という強い意思が100円を握りしめた手で伝わってきました。お酒を飲むのを楽しみにしているとハッキリわかりました。

「おばあちゃんたちは、過去にお酒を何時飲んだか?」

「覚えていない」

 忘れたくらいの久々の日本酒をとっても待ち遠しく黙って座っている。そのおばあちゃんたちは日々、高齢者の椅子付き手押し車や、介護杖を持ち歩いている人もいます。「帰り道は大丈夫かな」と少し案じましたが…。

 

「2杯目はいらない! これでもう充分やさかいに」

 

 夕暮れ酒場で飲みたいと言うおばあちゃんたちの1杯の日本酒を飲んでいるお顔は、言葉に表現できない満足感。皆さん無言で、マスクを急いで上げ下げしながら、おつまみの芋類をぱくぱく食べ、お酒が入っていた湯飲み茶碗は空になり、夜空になってきました。

「2杯目はいらない! これでもう充分やさかいに」

 日々、部屋にはテレビの声が流れ、でも今日は集会所でにぎやかな声が聞こえ、引き込まれるように皆さんの声を聞いていたい。

「この場に一緒におりたいげわ」という表情で黙って座って余韻を楽しんでいるおばあちゃんたち。

 帰る姿は、玄関の外で椅子付き手押し車や、杖を持って歩いて行く。今、日本酒1杯やビール1缶飲んでいたとは思えない姿に、何か心が満たされた背中に見えました。

 

仮設の夜、飲む場所もないまち

 

 ふと集会所に顔をみせに来た女性も「私、お酒よう飲まんげわ!」と言ったものの、栃木の地酒で女性に飲みやすいわよと話したら「1杯だけ飲んでみようかなと」快く喜んで最後まで会話を楽しんでいました。

 アルコールを飲めない方々も人々との交流が楽しそうでした。今回初めての夕暮れ酒場。1杯100円儲けなし4時から6時の2時間でした。

 その後私たちボランティアは、別室でミーティングして終わったのが7時前。でもその時間でも自治会の役員さんや足湯で来た女性たちは、まだ帰りたくない様子で残って雑談をされていました。

 あたりが暗くなった仮設の夜空。住民の皆さんはとても晴れやかなスッキリとした表情で帰られました。 (aiko)