「忘れない」をカタチにする—ともしびプロジェクトの福島被災地ツアー

 

4月22日の「次世代に伝える。原発避難15年目ラジオ」では、「ともしびプロジェクト宇都宮支部」で活動している八木茂さんから話を聞いた。ともしびプロジェクトは2011311日の東日本大震災をきっかけに生まれた団体だ。「忘れないをカタチに」をキーワードにして2011年から毎月11日にキャンドルに明かりを灯し、SNSで想いを共有し被災地域に発信する。宇都宮支部ではそれに加えて福島でのスタディツアーや講演会などを行っており、八木さんはその企画・運営に携わっている。

 

「時間が止まった生活」や日常に触れる

ともしびプロジェクトの一環で、浜通りの被災地を訪れるスタディツアーがある。これは2018年に「栃木避難者母の会」のメンバーと一緒に福島県浪江町・双葉町・富岡町を訪問したことから発足した。八木さんは現地で原発避難の現状を聴いたときに、そこにはそれぞれの生活があったことを痛感し、ともしびプロジェクトとして始動しようと決意した。参加者は教室に整然と置かれたランドセルや、予定が書かれたカレンダーなど、時間が止まったままの学校や住宅を見ながら、現地での暮らしの痕跡に触れることで、「被災地」という言葉の奥にある日常と向き合う。

 

ただ行くだけでは終わらない、「伝える」ツアーづくりの工夫

スタディツアーの参加者からは、次のような声が寄せられている。「震災について、私の知識の無さにびっくりした。何も知らなかった。11年間何をしていたんだろう、当たり前ってなんだろうって心から思えた。大勢の方と一緒に学べて本当に良かった」。

ツアー参加者、当事者に徹底的に寄り添い、ただの見学で終わらない心に残る学びの場にするために八木さんは次の5点を心がけているという。①家や学校などの日常生活に触れること、②見るだけでなくて当事者の話を聞くこと、③これからの地域社会を担う若者たちに参加してもらうこと、④被災者の方との打ち合わせは念入りにすること、⑤実際の活動の前後に、顔合わせ・活動後に振り返りの時間を設けること。ツアーに講師役として参加したコメントお姉さんの田中えりさんも、この話を聞いて「だから安心して参加できたんだ」と話していた。

 

原発事故の「わからない」と向き合う

八木さんは「津波による事故と原発事故は分けて考えなければならない」と話す。津波に対する教訓を聞く機会はあったが、原発事故はいろんな人の話を聞いても「わからない」と思うことが多かったからだ。「原発事故」は本当に個々のケースが複雑で、それぞれの辛さがあり、まとまらないことが多い。八木さんは、「だからこそこれからもできるだけ多くの人の声を聞いていきたい」と、一人ひとりと丁寧に向き合っている。

 

これからを担う私たちの役割は関心を寄せ続けること

 

この先の展望として「スタディツアーを福島だけでなく宮城でも開催し、そのアウトプットとして防災サミットもやりたい」という。次世代の若者に伝えたいことは、とにかく関心を寄せてほしいということだ。八木さんが伝えることの大切さを知っているからこそ、さらに若い人から若い人に伝え続ける横展開を期待している。そしてさらにその関心を寄せ続ける「ともしびプロジェクト」でありたいと語った。そのためには、やはり実際に現地を訪れて自分自身で感じて考えることが重要だと八木さんの話を聞いて改めて思った。(ラジオ学生 山本)