民間の力に頼りすぎ? フードバンクの利用者に見る、日本の社会保障制度の実態とは?

●「フードバンク鹿沼」社会福祉協議会ならではの特徴。

 9月6日みんな崖っぷちラジオのゲストは「フードバンク鹿沼」の菊池さん。フードバンク鹿沼は鹿沼市社会福祉協議会の事業として平成27年に始まり、市民からの寄付で集まった食料を生活に困っている人に無償で提供している。

 利用者の多くは相談窓口を経由してやってくるそうだが「低収入で生活が苦しい」「非正規で仕事が切れてしまった」「高齢で年金だけでは生活できない」など生活に困っている理由はさまざま。昨年の利用者は464件、提供した食品は6,366kg。また市民からの食品の寄付が404件、6,825kgあった。食品を継続的に寄付してくれる人もいるそうで、中には自宅で余った食品だけでなくわざわざ食品を購入し寄付する人もいるという。社会福祉協議会ならではのネットワークと機能を活かしてフードバンク活動を行なっている。

 

●リピーター層は40〜60代単身男性。制度の狭間に取り残された存在。

 フードバンク鹿沼は利用者の6割が男性で、その内訳は40代が20%、50代が30%、60代が25%。そして約半数が単身世帯である。その中でも繰り返し利用するリピーターになっている人が85%にものぼる。つまり「40代〜60代の単身男性の利用が多い」状態だ。この現状について菊池さんは「就職氷河期以降、うまく就職に結び付けなかった人が派遣など非正規雇用で収入が低く不安定な状態。40代50代向けの公的な支援策はほぼなく、一般的に働き盛りと言われる世代であるため生活保護も受けづらい。そんな中でせめて使えるのがフードバンクだ」という。まさに制度の狭間に取り残された問題である。

 最近では8月21日、ひとり親世帯対象にお米の配布会を実施。企業とボランティアの協力を得て子どもの遊びコーナーも併設し、90人ほどが訪れたという。時間的にも経済的にも普段子どもたちと遊ぶ余裕がない母子家庭に「夏休みの思い出づくりの場を提供したい」という企画の意図もあったそうだ。

 今後は高齢者への支援にも力を入れたいと語る菊池さん。「年金だけじゃ食べていけない、貯蓄も切り崩してきた。頼れる身寄りもなく、使える制度もない」そんな状態の高齢者が今増えているという。

 菊池さんは「民間の力に頼りすぎ。公的施策の拡充が必要だ」という。高齢者に限らず、日本の社会保障制度は家族がいる前提で設計されている。今回話題に出た母子家庭や単身男性など、いろいろな分野で生活困窮のケースは増えてきている。社会の現状に合わせた、制度の見直しが急がれる。【佐藤優】