地域の「見えない存在」によりそい助ける、子どもの居場所

栃木市の老舗NPO、蔵の街たんぽぽの会

 5月3日「みんな崖っぷちラジオ」のゲストは、蔵の街たんぽぽの会の小田健治さん。小田さんは、一昨年から蔵の街たんぽぽの会に加わって子どもの居場所事業に携わった。現役時代は電気メーカーで仕事漬けの日々。退職後、福祉の世界に飛び込み、現在は居場所にいる子どもたちの父親的存在として日々奮闘している。

 蔵の街たんぽぽの会は、今年で設立40年の老舗。「元気とほこり」をスローガンに、栃木市で子育て支援や障害者の就労支援に取り組む。最初の活動は平成元年(1989)に始めた「おもちゃ図書館」。障害児の家庭が遊びを楽しみながら地域とつながる場として始まった。現在は障害の有無に関わらず、0歳から100歳までの人が遊びを楽しむ「地域に開かれた居場所」だ。

 今回のゲスト、小田さんが関わる子どもの居場所はおもちゃ図書館とは対照的な活動。家庭にさまざまな困難を抱える子どもを対象に、食事の提供や学習支援を行う。地域にはあまり知られていない活動だ。

 

心でぶつかり合った相撲。「相手を信用するって大切」

 居場所には心に傷を持った子どもが多い。そういった子どもには「試し行動」が多く見られるという。試し行動とはわざと大人を困らせ、自分をどれほど受け止めてくれるかを探る行為。小田さんも初めは洗礼を受けて困惑したと語る。

 昔いたタカシくん(仮名)。スタッフに頻繁にちょっかいを出す試し行動が多い男の子だった。小田さんは男子には身体でぶつかった方が良いと考え、芝生で相撲を取ることにした。負けず嫌いの小田さんにタカシくんはニコニコしながら何度も向かってきたという。「お互いに全力でぶつかり、芝まみれになったがスッキリした」と小田さんは笑顔で語る。その後タカシくんは試し行動が柔らかくなり「相手を信用するって大切なんだよ」と自ら語ってくれたという。全力で向き合ってくれる大人の存在が子どもにとって心の支えになるのだ。

 

Vレンジャー×たんぽぽ。コロナ禍での心のつながり

 子どもの貧困をテーマに活動するボランティアチームVレンジャー」。私もVレンジャーの一員として以前から蔵の街たんぽぽの会の子どもたちと関わりがあった。きっかけはコロナ禍で始まったオンライン企画。大学生と子どもがオンラインツールzoomを用いて、会話やオンラインゲームをした。これまで全部で7回の交流を重ね、子どもたちにも大好評だ。またコロナ禍で活動を継続できたこと、オンライン企画という新しい経験ができたことは大きな収穫だ。さらに、コロナ禍でつながりが希薄な中、子どもたちの笑顔に元気をもらった。ボランティアとして助けているように見えて、実は逆に助けられていたのだ。

小田さんは「遠く離れていても私を知ってくれている人がいる」ことが、子どもの心の支えになるという。コロナ禍だからこそのつながりに支え合いを感じた。

地域には困難を抱える子どもや家庭が沢山ある。だがその存在はあまり認知されていない。「7人に1人の子どもが相対的な貧困状態」と耳にしても、実感する人は少ないだろう。子どもの貧困は家庭内にあるため、社会的に解決する動きになりにくい。子どもの居場所は「見えていない」存在に寄り添い助ける地域の重要なセーフティネットである。【佐藤優】