学校の枠にとらわれない「自然の中での自由な学び」子どもがやりたいことをやるフリースクール

28日のラジオでは「NPO法人みんなのカタチ 自由な学び舎 子どものはらっぱ」から三厨由美さんと神林桂子さんをゲストに迎え、話を聞いた。

 

●活動の原点は野外活動での「心がいい感じに動く」という実感

 

ここは、茂木町で庭先の広場や付近の山や川を拠点として20199月から活動を始めたフリースクール「子どものはらっぱ」。不登校など、学校に対していろいろな想いを抱えている子どもたちの居場所となっている。特徴は、校舎が存在せず、自然の中で教育を行っていること。教育の内容もカリキュラムがなく、自然の中で自由に遊ぶことを大切にしている。

 子どものはらっぱのような自然の中で教育を行うフリースクールは県内では珍しい。こんな学校を始めたきっかけは何なのか聞いてみた。

発端は、以前からフリースクールをやりたいと思っていた代表の栗田しのぶさんが、野外活動で「心がいい感じに動く」ことを実感したことだったという。

また三厨さんも、「自然の中で過ごすことで土や風、太陽を浴びて生活することがどんなに普通で、大切なことかと気づくことができ、人間の軸がきちんと整っていく」のだと言う。最近は、アスファルトで舗装された道が多く、子どもも大人も自然の中を歩かない。便利になったが、自然の中で過ごす体験機会が減ることは危惧されるべき問題である。崖や穴ぼこがある不安定な環境や草むらを駆け回る、そのとき私たちは普段アスファルトの上では感じることのできない自然の感覚を足の裏から感じる。そんな子どもの頃の体験はかなり貴重だ。

 

●「やりたいことをやる」ことで主体性や想像力が養われる

 

子どものはらっぱには特別決まったカリキュラムなく、「子ども11人がやりたいことをやる」のが教育方針だ。実際には、材料を持ってきて自分で好きな料理を作ったり、冬の川に入って網で魚を捕まえたりなど普通の学校ではできないような体験ができてしまうのだ。もちろんスタッフが見守っているが、基本的には子どもたちに全てやらせるという。親の立場であれば危ないことはやらせたくないと思うが、もし私が子どもの立場であったら、好奇心のままに何でもやりたい、すごいと褒められたいと思う。危ないからと過剰に大人が“子どものやりたい”を制限してしまうのではなく、子どもが”やりたい”をとことんやることで、自ら考え、学び、行動する主体性や想像力が養われていく。もしやりたいことをやって失敗したとしても、そこから学べることはたくさんある。子を思って口出しをする親もいるが、はらっぱで学んだ我が子が大きく成長していることに気づけば、見守ることが子を思う一番の愛情であることが分かるのではないかと思う。

そして、神林さんは「はらっぱに来る子どもには特性や背景の違ういろんな子がいるが、11人それぞれの今を丸ごと受け止める」を大切にしていると言う。普通の学校では1人1人の生徒に先生が向き合うことは難しい。結果、学校に対して居心地の悪さを感じる子も中にはいる。人間は多様性に溢れた生き物である。それを無視して1つの枠にはめる教育ではなく、1人1人の個性を大切にする教育を行う拠点の存在が重要だろう。こんな場所が少しでも増えていったらいいなと思った。

 

●親も子も、共に自分と向き合い、成長できる居場所

 

「ここに来る子どもの中には、初めて来たときに目も合わせない子どももいた」と三厨さん。しかしその後、火起こしや、追いかけっこなどを他の子どもとしていく中で、最初の「目も合わせない」状況から、上着を全部脱ぎ、目の色を変えて、夢中に遊んでいる姿へ変化していった。続けて三厨さんは、「子どもたちが学校に戻ることを目的とはしていない。はらっぱで元気になって学校へ戻っていければそれでいい」と話す。

子どものはらっぱは、不登校など「学校に対していろいろな想いを持つ子ども」の居場所であるが、その存在はただの居場所ではなく、再び学校へ戻るきっかけの場所にもなっている。さらに親の居場所・成長の場所となっている。月に1回の親とスタッフでのおしゃべり会では、それぞれの親が今抱いている思いをみんなで共有していく。三厨さんは「会を開くたびに親たちの思いも変化していき、成長を感じる」と言う。不登校で子どもが学校に行かないと、親は「何とかして学校に行かせたい」という気持ちが強くなる。しかし、この状況は親と子のどちらにも良い影響を与えずに悪循環に陥る。しかし、はらっぱで心と体を休めると「学校に必ずしも行かせなくてもいい」という学校に縛られない考えに変わる、子どもと向き合い、受け止める。きちんと自分と向き合い、それぞれのタイミングでゆっくり再出発をすれば良いのだ。

 

●「復帰しすぎて子どもがいない(笑)」崖っぷち

 

子どものはらっぱの活動は順調に見えるが、実は今、がけっぷちモードだという。ここで元気になって巣立っていくが増えて、逆に来る子が減っている」と言う。原因は茂木町で距離が遠い、開催が週に1回であること。そこで身近で通いやすいフリースクールにするために、毎日開催にし、「田舎を売りにしたフリースクール」を検討している。

「素敵な里山を1つ買って自ら拓いたり、家を建てたり、来年度から始められるといいよね」とお二人はこれからの夢について楽しそうに語られていた。

自然には日常を忘れる「逃避」の要素と目を奪われる「魅了」の要素があり、自然に触れることでポジティブな感情が出てくるとの研究結果がある。悩んでいる子どもでさえも元気にしてしまう自然の力。子どもも大人もその魅力に気づき、自然との付き合いを大切にしていきたいものだ。

●学校に行かなくても良いという選択肢

 

子どものはらっぱでの学びのフィールドは、自然全体、地球全体である。このようなフィールドでの学びが、学校という枠にとらわれない自由な学びを実現している。このような自由な学びに触れた時、「学校に必ず行かなくても生きていける」ことに気づくはずである。学校に行かなくてはならないという固定概念に縛られるのではなく、学校に行かなくても良いという選択肢、勇気を持つことが大切である。

最後に、ある男の子からのメッセージを紹介して下さった。

―明るい、楽しい、不登校ってむっちゃ楽しい。学校に楽しく行けてればいいけど、行けていないのなら、学校に行こうとする努力も、無理して学校に行く時間ももったいないよ。

何しろ楽しもう!―

無理して学校に行かなくても良い。学校に行けないことは決して普通から外れてない。むしろ学校に行かないことをネガティブに考えるのではなく、最大限楽しむべきなのではないか。そう思えるような素敵なメッセージであった。

 

今回のラジオを通して「学校に無理して行かなくても良い、むしろ前向きに考えてもいいのだ」と、悩む子どもや親御さんに多くこのメッセージが届けばいいなと思う。子どものはらっぱのような拠点が県内にもっと増えていくことを願うばかりだ。(矢島)