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もったいないを自分たちで。地元の子どもたちのために。

○「4万円を2千円で」。中学校区で制服リサイクル活動

「制服リサイクルバンク」は、卒業で使われなくなった学校の制服を集めて修繕し、1着500円ぐらいの格安で、お渡しする活動である。卒業生から新入生へ、そしてまた次へと循環させ、「制服の持続可能性」を築く。宇都宮の「星ヶ丘中学校制服リサイクルバンク実行委員会」メンバーの印南 弘美(いんなみ ひろみ)さんに活動の様子を聞いた。

制服バンクができたのは2018年8月。当時、印南さんの子どもも星中(星が丘中学校)に通っていたという。だから「リサイクルした制服を安く購入できれば、家計の助けになるだろう」と思い活動を始めたという。

 女子制服は、上衣とスカートを合わせて定価41,800円。しかし、制服バンクではそれを 2,400円で譲れる。非常に安いので負担はかなり楽。さらに、クリーニングや補修、名入れ刺繍も取っているので、新品と同じくらい綺麗な状態だ。

 制服は、年に2回「展示譲渡会」を開き、見に来て試着もできる。「毎回約35~40組の親子が来ますね」と印南さん。1年間に回収する制服・運動着などは約60着。制服の在庫は近くのNPOの事務所に保管してもらっている。

 

○地区の子どものためのリサイクル・ボランティア活動

 使用済みの制服を買い取って販売する所にリサイクルショップもある。しかし、利益優先のため高値だ。対して、制服バンクでは制服を買い取ることなく回収して譲渡する。費用はクリーニング代に使う。修繕、回収などの作業は地区の(主に女性の)民生委員・児童委員が実行委員会に入りボランティアでやってくれる。地区の自治会に回覧を回してもらったり、卒業生全員にチラシを配ったりする「地区の子どものためのボランティア活動」となっているのだ。

 

○「困窮家庭だけじゃなく普通の家も」分け隔てなく

「子どもたちに『自分の家は他の家と違うのかな』と思って欲しくない」

 印南さんの活動は、特に困窮家庭に向けたものではない、という。「地域の助け船として、分け隔てなくさまざまな家庭を見守り、手助けをしたい」と話していた。星中制服バンクの活動のねらいはリサイクル。「でも、格安だから困窮家庭にも届くでしょ」と印南さん。実際に、ひとり親家庭のために土日や夜の時間にも実施するなど、展示会の時間の配慮もしている。「これぞまさしく、ユニバーサルデザイン!」と思った。

 

○“たすけあい”の一歩目。食品リサイクルの「きずなBOX」もある

 印南さんが勤務する「戸祭地域コミュニティセンター」では、制服の回収だけではなく、食べ物の回収も行なっている。施設内にフードバンクと連動した「きずなBOX」と呼ばれるカゴがあり、そこに食料を入れることができる。食べ物が無く困っている人に気軽に食料寄付ができる。

「困っている人に向けて食べ物の寄付をしてみたい。しかし、どうすれば良いか分からない」、「難しいのではないか」。そう思う人が “たすけあい”の一歩を踏み出すきっかけとなるのが「きずなBOX」である。ぜひ利用してみてほしい。

 

○県内4か所。まだまだ知られていない“制服バンク“

「栃木県内の制服バンクは、足利市(全域)と鹿沼東中、小山城東中、ここ星中の4か所だけ」とコメントおじさん矢野さん。中学校区でやる理由は「制服が中学校ごとに違うから」だという。「足利は全市一緒の制服なので1か所で全部OK。リサイクル的には優れている」という。

印南さんと出会うまで、私は「制服リサイクルバンク」を知らなかった。しかし世の中には、印南さんのように「制服リサイクルを通じてさまざまな家庭を助けたい、見守りたい」という想いを持ち活動している人たちがいる。私は、この活動をもっとたくさんの人に知ってもらいたいと思った。その第一歩として、このブログを読んでくれた人に、何かを感じ取ってもらいたい。地域でできる、地域の子どものためのボランティアだから。(櫻井)