在留外国人の医療不平等!「命の沙汰もカネ次第、在留資格次第」という現実

「名古屋の入国管理施設でスリランカ人女性が何の治療も受けられず、病気で死んだ」ことがニュースになった。そんなこともあり6月15日のゲストは長年・済生会宇都宮病院の医療ソーシャルワーカーだった荻津守さんを招いて「外国人の医療」の話を聞いた。

 

●外国人は医療費を増額される

 

 「日本の医療を使う外国人には、大きく3つタイプがある」という。①インバウンド(日本にくる外国人観光客)②医療ツーリズム(日本の高度な医療を求めて来日する人)、③日本に住んで生活をしている外国人(定住外国人)の3つだ。

 いま「定住外国人にとって、医療ツーリズムが大きな問題になっているんです」と荻津さん。医療ツーリズムの多くは富裕層。だから病院が診療報酬を(通常の300%等に)上げてもへっちゃらで、病院側も儲かる。高額の医療費も富裕層なので来日への足かせにならない。しかし一方で医療ツーリズムの値段が「外国人医療の相場」となってしまうと定住外国人はたまったものではない。例えば工場・農場・コンビニで働く外国人労働者(技能実習生、留学生…)は、非正規・バイトも含む低賃金を貯めて本国に借金返済し、実家に仕送りして働いている。こうした人たちにとっても、外国人医療の相場の高騰は同一に襲ってくるのだ。

 医療ツーリズムがなくても、そもそも外国人には診療報酬が高い。「(健康保険がない)外国人は医療費を増額して請求する」と決めている病院もそこそこある。理由は、外国人の診療は「言語の壁」で手間かかるから。さらにトラブルを避けるために診療報酬を上げて「そもそも外国人が病院に来ないようにしている」例もある。めんどくさい人は来なくていいということなのだ。

 問題なのはこんな病院を受診すると、①②③も“外国人”と一括りにされ、定住外国人も高額な医療費を請求されるという。これは不公平だろう。

改善策は「医療従事者にこの事実を知ってもらうこと」と荻津さんは言う。医師たちは、診察室に来た患者を診察することが仕事、だから外国人と会うのは病院の医療事務の人なのだ。事務方が外国人を拒んでしまえば、診察室に入ってこないので、外国人が困っていることが医師はわからない。実は医療業界にすら外国人の医療問題は知られていないと荻津さん。

 話を聞いて、私(小浜)はこの問題を知る人が増え、「日本で医療を受ける外国人」がどんな人なのか、どんな対策をすればいいのか議論するきっかけが早く作られてほしいと思った。

 

●「非正規滞在」の外国人。医療なし、普通の生活もできない!

 

 日本に住む外国人の中でも非正規滞在者は「働くことが禁止」されている。就労できないので当然、健康保険に入れない。だから病院受診には医療費を100%払わなくてはならない。必然的に市販薬で我慢するなど「お金がかかる医療は使わない」ことになる。

冒頭の、入管施設で死亡した人については、「在留資格との関係がある」と荻津さん。在留資格と健康保険証の関係を教えてもらった。外国人の日本滞在には、必ず在留資格が必要で「就労ビザ」の人、「特定技能制度」での労働者、留学生、配偶者が日本人・・・等々の数十種類の在留資格がある。この人たちが「正規滞在」。正規滞在者は健康保険に加入できる。

しかし、外国人が「何らかの理由で在留資格がない状態になったとき」に非正規滞在となる。オーバーステイの人や、難民申請中の人、仮放免(※)された人などだが、これらの人は、全員、就業制限があるうえ、健康保険にも入れず厳しい条件が山ほど課せられている。

「入管施設に収容されたり、仮放免された非正規滞在者のうち、何らかの形で帰国している人はいるが、どうしても帰国を拒んでやむを得ず不法滞在する人も出てくる。国に戻りたくないのは、本国政府やマフィア(やくざ)から追われていて、帰国すれば自分の身が危険(=難民)だったり、出稼ぎで母国で待っている家族のために帰れないなど、人それぞれある。

このような「母国に帰れない人」を日本は“非正規滞在”者として厳しすぎる制限を設け、基本的な生活すらできない環境に陥れている。厳しい制限とは、働くのは禁止、給付金や食料の援助はなし。住居の指定(登録)も必須、行動範囲の指定。さらに定期的な出入国在留管理庁の関連施設(以下:入管施設)への出頭義務も課される。

―管理しながら、働くな、金も食もはやらない。なんて非人道的なことか、と私は思った

 

●「日本は豊かで裕福な国だが、心は貧しい」。人権保障を!!

 

 まとめると、非正規滞在者は「就業はできないが、住居の指定が必須なため、家賃を払わなくてはならない。食料も自分で調達しなくてはならない」という矛盾ばかりの生活を強いられるため、ギリギリの状態にならない限りは医療にかけるお金など到底ないのだ。

 私は上記で「外国人が日本で医療を受けられる、議論のきっかけ…」と述べたが、荻津さんの言う非正規滞在者の虐げられた状況を踏まえると、医療体制も含めた、外国人の生活保障や人権保証を早急にすべきと考えた。

 ラジオの最後に荻津さんが、マザーテレサが来日した時に残した言葉「日本はとても豊かで裕福な国だが、日本人の心は貧しい」と紹介してくれた。その通りだと思った。

外国人の医療問題を解決するために私たちが直接何かできるわけではないかもしれない。しかし、この問題を知ることで日本人が「外国人を温かく受け入れる心・姿勢」を持つことができる。そして、その空気を作るだけでも、日本の制度・社会を動かせるはずだ。「他人」や「よそ者」、「外堀」には触れないという貧しい心を捨て、手を差し伸べる人が増えることを願うし自分もそんな人になりたいと思う。 (コハマ)

 

※仮放免…「収容命令」または「退去強制命令」で入管施設に収容されている外国人が、請求や職権により一時的に、入管施設から出所させる制度のこと。