「学びたくても学べない人を一人でも多く救いたい」自主夜間中学、9月開校!

 今回のゲストは宇都宮大学国際学部教授の田巻松雄さん。多様な学びの場を提供する9月宇都宮で開校を目指す、ボランティア教員による「自主夜間中学」について話を聞いた。

 

◆希望を求める人たち「義務教育未修了者」「中学の形式卒業生」「外国人」

 私=田中は、昼間の学校で学んできたが、これから始まる“自主”夜間中学ではどのような人が学んでいるのだろうか。

 夜間中学で学ぶ人は主に3つのグループという。1つ目のグループは「義務教育未修了者」。小学校に行っていないか、小学校を卒業していない人たちのこと。

 2つ目のグループは「中学校の形式卒業生」。日本の小学校中学校では「ほとんど学校に行っていなくても、留年させずに卒業させる」という考えが根付いているため、不登校などで十分な義務教育を受けていないにも関わらず形式的に卒業し、きちんと学びたくても再入学ができない状態の人たちがいる。

 3つ目は「学齢期を超えた外国人」。母国の中学校は卒業しているが、日本の高校に入るために日本の中学校で学びたい人たち。

 昼間の中学校では、一度中学校を卒業した人や学齢を超えた人たちを「入学させない」という制限があり、この人ような人たちに学びの場を提供できない。そこで、学ぶ機会が得られない人、学びなおしを求める人たちにとって夜間中学がとても重要な場所となっているのだ。

 

◆“自主”夜間中学は「学び」と「居場所」

 自主夜間中学では教科を教える前に、どういう学びを欲しているか、どう生活で困っているか一人一人と相談することから始まる。そうして、学びの場だけでなく利用者の一つの居場所を提供し、新しい生活を切り開くきっかけになっていくのである。昼の中学校ではできない、国籍も年齢も多様な空間で学ぶことが楽しい学びにつながっていく。田巻さんの話を聞いていく中で、夜間中学の魅力をたくさん知ることができた。 

 現在、公立の夜間中学は全国に34校(約1800人)しかない。生徒は、80%が日本国籍がない人(外国人など)、60歳以上が23%、男女比では女性65%となっている(2016年文科省調査)。文科省では「各県に最低1校」をとの方針を出している。公立の夜間中学は義務教育と一緒で学費無料だがカリキュラムに則っての運営が必須である。

 いっぽうで“自主”夜間中学は全国で40校、7400人が学んでいる。教員もボランティアで、カリキュラムも自由な(本人に合わせてカスタマイズする)NPOの学校だ。

 現在、田巻さんは9月に宇都宮で自主夜間中学の開校を目指している。2/27に発足記念集会を行い、県に自主夜間中学を作ることを宣言した。学びの場を求めている一人一人の実情によりそいたいという熱い思いが伝わってきた。

 

◆「自分のエネルギーの半分は、自主夜間中学に使う」

 田巻さんは5年ほど前に自主夜間中学について知り、多くの(ボランティアの)教員との出会い、教育ボランティア活動を通じて、学びを求めるすべての人たちに場所を提供することは必須であると感じたそうだ。大学教員を退職した後は自身のエネルギーの半分くらいを夜間中学につぎ込むと言っていた。当たり前の学びが出来なかった人たちが「ようやく学ぶ機会にたどり着いた」と楽しそうに授業を受ける様子を見るのはとても感慨深いものなのではないだろうか。

 

◆「そのままにはしておけない」これからの時代に必要な新しい常識

 田巻先生には何より、「学びたくても学べない人を一人でも多く救いたい」という強い思いを感じた。夜間中学という学べる場所はあっても、そこまでたどり着けない人が存在する。そもそも知らない人、生活に余裕がない人、学校に対して不安を抱いている人など。そんな人たちに対して「まずは安心を届けること」が大切であるとのこと。

 今回の話を通して、多様な学びが存在することを理解し、一人一人の状況に真摯に向き合っていくことの重要性を考えることができた。(たなか)

文科省のパンフレットです。外国、女性、高齢の人が比較的多いです。
文科省のパンフレットです。外国、女性、高齢の人が比較的多いです。