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迷走人生と、福祉の仕事の出会い

障害者の生活介護から就労のサポートまで

 今回のゲストは障害者福祉施設に勤める濱貴司さん。鹿沼愛隣福祉センターで働く。生活介護、就労継続支援(B型)、就労定着支援、指定相談支援をやっている事業所だ。障害者の介護や、就労が困難な人や仕事が長続きするように支援することが中心の仕事であるセンターだけでもこれだけの活動をしているが、独自に地域の高齢者や生活困窮などに対する「なんでも相談窓口」を展開している。障害者以外の外部へのアプローチができるのもいいなと感じた。

 就労継続支援B型事業の給料は作業能力や貢献度に応じた「工賃」で支払われる。ある人はネジを袋に入れるだけ、ある人はネジの向きをそろえるだけといったように、利用者の能力を最大限に引き出せるよう工程を分け、どんな人でも作業に加われるように配慮する仕事だ。

「福祉は、やりがいがある仕事」という濱さん。今の仕事に至るまでを聞いた。

 

挫折。「人の役にたつ仕事」との出会い

 濱さんは工業高校の建築科を卒業して就職した。だが、自分の居場所がわからなくなり、精神的にも追い詰められて1年半でやめる。一度目の挫折。

 その後は様々なアルバイトをしつつ生計を立てた。学校給食の食材納品を長く続けていたが、仕事がなくなる夏休みに「毎年車で旅をする」人生を送っていた。自販機補充のバイトのとき助手に「福祉を学んでみたい」と相談され、仕事帰りに専門学校の案内を見に行った。これが「福祉との出会い」だった。

「人の役に立つ立派な仕事が、自分に本当に合っているのか」と不安もあったが、皆に背中を押され28歳で介護福祉専門学校に入学。異年齢層との交流、ボランティアでの障害者との出会いなどがあり、自分の今までの経験を活かせる障害者の就労支援を目指した。

 30歳で大学に編入。ボランティアサークルで多くの人と交流したが、大学卒後就職できず、二度目の挫折。でも、ボランティア仲間の(のちの)奥さんの紹介で、栃木で就職をした。

 

人生は、旅。「人との出会い」

「人生は旅のようなもの。大切なものは人との出会い、支え合いですね。旅で一番楽しいのは、美しい景色を見たり、おいしいものを食べることではなく、地元の人との交流や旅人同士の交流」という。

 迷走人生をふりかえって「人は一人では生きていけない」と感じた濱さん。最後に伝えたかったのは、様々な場面で出会い、支えられてきた人々、今の仕事に携わらせてくれる利用者さん、一緒に仕事をしてくれる仲間、今も全力で支えてくれる家族に対する感謝だった。

 挫折をしても、無駄な時間を過ごしても、人生を諦める必要はないと濱さんは私たちに思わせてくれたのではないだろうか。(たなか)