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食品ロスを減らし貧困を救う。利用者に寄り添うフードバンクうつのみやの活動

10年やってる老舗フードバンク

 「フードバンク」。聞いたことはあるだろうか。なじみのある人もいれば、まったく聞いたことのない人もいるかもしれない。

 フードバンク(以下、FB)は、企業や各家庭からまだ食べられる食品を寄付してもらい、食に困っている人に無償で食品を提供するもの。全国には130のFB団体があり、FBうつのみやは10年やっている老舗である。世界的問題の食品ロスと貧困。私たちにもできることがあるかもしれない。

 

特長は、食がない困窮の原因を解決する「総合相談支援」

 

 今回のゲストの伊上さん(仮名)は、NPO法人FBうつのみやのスタッフ。「うちの大きな特徴は、FB利用者の総合相談支援を行っていること」という。「食品提供だけでなく、生活状況の聞き取りをして、その人の生活を根本から立て直すもので、全国的には珍しい活動ですね」。

 相談支援は「これからどのように行動をすればよいか、使える制度、どんな団体とつながればよいか」などのアドバイスをして、来たその日に食品の提供をする。

 他の特長に、個人への食品提供ができること、行政や社会福祉協議会への申し込みが不要、利用回数の制限もなし」というのもある。

 ということは、多くのFBは、回数制限、公的機関のお墨付き、そもそも個人への支援をしない団体が多いのかと思いました。伊上さんが運営するFBうつのみやは、ここまで利用者に寄り添い続けている優しい団体であることがわかった。

 

コロナだから休止しない! でも、人手不足

 

 去年はコロナの影響で食品の取扱量が前年比3倍になり、学生や仕事を失ってしまった人などの利用者(困窮者)が増え、スタッフ(ボランティア)の人数も足りなくなった。特に生活相談を行うスタッフの育成が難しく、そこを増やさないと今いる人への負担が大きくなる。食品の整理など、活動にスタッフ数が追い付いていない現状だが、まったく増えていないわけではなく、少しずつでも来てくれていることに伊上さんも感謝していた。

 また、4月の緊急事態宣言の際には、活動休止も考えたが「今、私たちが活動を休止してしまったら、食品に困っている人たちはどうなってしまうのか」と考えなおし、対策を強化したうえで活動を続けることにした。収まる気配が見えない不安、利用者の増加に伴う人手不足など、新型コロナウイルスでて多大なる影響を受けていることがわかる。

 

ボランティアで、世界の貧困と食品ロスをなくせるぞ。

 

 10年前、FBうつのみやは東日本大震災の被災者援をする形で始まった。当時は、FB活動が浸透していない時代で、利用者への総合相談支援を行う活動ではなく、福島、宮城などで被災者への炊き出し活動を行っていた。

 2011年4月からとちぎVネットの事業のとして始まったFBうつのみやは、昨年NPO法人として独立した。これからの目標としては、食品をより多く管理できる場所、団体の活動に深く長く関わることのできるスタッフを確保したい。

 最後にひとつ、びっくり!話。

 「Twitterを通じて、新潟からFBうつのみやの活動をしに引っ越しをしたい、と連絡がありました」と伊上さん。「さすがに、そこまでして来られても困ります…と返信しましたけどね(笑)」

 ―引っ越してまで活動に関わりたい人がいるほど特別な活動をしている団体なのだ―と田中はわかりました。

 この活動にボランティアとして関わり、食に困っている人に手を差し伸べることが、食品ロスや貧困の問題を解決し、世界を救うことにつながるかもしれません。世界の問題を解決するために、私たちができることはたくさんあるはずです。(たなか)