防災。「個人の記憶」を「社会の記録」に

 今回(/21)のゲストは、人と防災未来センターフェローの坪井塑太郎さん。坪井さんは地理学の観点から防災を研究しています。昨年10月の台風19号で起きた宇都宮市・田川の氾濫では、避難行動や生活復興について調査、報告書を作ったのでラジオで聞いてみました。

 

後世に、災害の情報を伝えていく

 

「台風19号は東日本に甚大な被害が出て、栃木県も一部損壊が8000戸以上。日本一多かったんですよ」と坪井さん。さらに「被害は、災害が起きた直後は報道されるが、その後は扱われない」と指摘する。目新しさ、新奇性のニュース情報だけでは、本当に必要なことが伝わっていかないのだ。

「洪水の様子や避難方法、生活復興の手立てなどの情報は『個人の記憶』のみに残る。これを『社会の記録』にするために、被災後5か月でNPOとしてアンケート調査し、内容を報告書にまとめたという。

 では、「記憶」を「記録」にする目的は何だろうか。それは、後世に災害の情報を伝えていくことだと言う。災害は繰り返し起こるものであり、いつでもどこでも起きる可能性がある。しかし、水害の被害は地形によるところが大きいため、記録を残しておくことで特に気を付けなければならない地域が分かる。分かっていれば対策を講じることができ、被害を抑えることができる。また、生活復興についても調査し、まとめることで「復興の手立て」やそれに「かかる費用の見通し」を持つことができる。このデータを基に、復興のための補助金の金額について見直しを訴えたり、支援の方法を再考したりできる。また、被災したときには、先が見えない中で見通しを持つことができる。それは希望の光になるのではないだろうか。

  

「防災に100%はない、だから、できることはなんでもやる」

 

 調査では、特に二つのことが印象に残ったという。一つは「まさか自分が被災するとは思わなかった」と言う被災者の方が多かったことだ。「いつ被災者になってもおかしくない」という心構えを持つことが大切だという。

 もう一つは災害時の写真に残った時間の記録だと言う。被災した方々にとっては心が痛くなるような写真かもしれないが、時間ごとの増水の記録を残すことができた。これは後世に災害を伝えられるために役立つだろう。「防災に100%はない。だからこそできることはなんでもやる。」坪井さんのこの言葉を心に持つ事がとても大切だと感じた。(おぐま)

>>調査報告書はこちら

 

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