1/28のゲストは、薬物依存当事者とその家族の回復支援の現場を渡り歩いてきた安髙真弓さん(宇都宮大学・地域デザイン科学部の先生)でした。薬物依存と聞くと「犯罪」のイメージが強かったのですが、これからはIR法案でのカジノ・ギャンブル依存もあるし、依存問題とは何なのか、どんな支援があるのかについてお聞きしました!
依存するものは身近にある。「心が痛くて薬物を使う」
依存する薬物には「持ってるだけで違法」のものもありますが、風邪薬や痛み止めなどの市販のものもあります。お酒(アルコール)も体に取り込んで変容が起こるという点で薬物ですね、と安高先生。
なぜ、痛み止めを大量に飲んだりするのか不思議でしたが、薬物を乱用する原因は「どこかが悪くて体が痛い」のではなく、「心の痛みが体に現れている」とのこと。「だから物質だけでなく行為(買い物・パチンコ・ギャンブル)にも依存する」とのこと。
さらに薬物依存はその地域の社会問題(例えば産業構造の変化⇒失業・転職)や当事者の生活問題が原因となったりします。「心が痛くて依存する」とは名言だなと思いました。
また、日本では薬物依存は犯罪であり(刑事)処罰の対象であるという意識が強いですが、欧米などでは薬物依存は医療、福祉の対象者として「回復支援の対象」であるという考え方が主流とのこと。
私は「薬物は私たちから遠いところにある恐ろしいもの」というイメージでしたが、実際は身近なところにもある。そして、私の中の薬物依存の捉え方も犯罪の側面を強く意識していたな、と認識を新たにしました。原因も薬物依存当事者だけの問題ではなく、私たちみんなで考えていかなければならないことなんだと気づきました。
「生きやすくなるための手伝い」が支援!
回復支援とは「依存の状態から抜け出すための支援」や、薬物依存になる前からある持病などの「生活の課題を軽くしていくための支援」です。
安髙先生が福岡の精神保健福祉センターの職員だった時には当事者とともに、本人が「薬物依存になった背景を一緒に考え」たり、「薬を使わずに他の人と楽しむ方法」を考えたりしたそうです。
安髙先生は薬物依存当事者の家族の支援も行っていました。例えば子どもが薬物依存になってしまったとき、その家族は大変な思いをしながらも「当事者を助けようとする」ことがあります。助けようと頑張っていても、周囲の人から「育て方が悪い」と言われることもあります。そのような家族の悩みを聞いたり、ケアをする支援をしたりします。
「相談は母親が多く、父親は少ない」と安高さん。これは精神保健福祉センターが県立の施設で9~17時しか開いておらず、週末はお休みになるのが原因、と言います。お役所だけではだめなんですね。
いっぽうで民間の支援施設としてダルク(DARC)があります。これは当事者が「自分の人生、どうにかしなければいけない、また同じことを繰り返す…」などの意識から発足した当事者が運営するリハビリ施設です。全国各地にあるダルクは緩やかに連携を取りながら、独自のプログラムで回復支援を行っています。しかし国からの支援は十分ではなく、民間ですので利用料が必要(共同生活して回復プログラムを行う)です。その意味で日本では回復支援施設のバリエーションが少なく、社会福祉政策としての法整備もないことが問題だと矢野コメントおじさんもに言っていました。
お話を聞いて、薬物依存の問題の多さと解決の難しさに驚きました。知らないことばかりだったので、これからの生活や学生パーソナリティの仕事を通して世の中の様々な問題について考えてみたいと思いました!(おぐま)