1月22日のみんながけっぷちラジオ、ゲストは弁護士の中澤浩平さんでした。中澤さんは「外国ルーツの若者」の弁護を仲間と一緒にしています。
外国に行ったことない青年に「強制送還」??
中澤さんは現在専門学校に通う18歳、20歳の兄弟のケースを例に話をしてくださいました。この兄弟は、日本に永住資格を持つブラジル人の父と、ペルー人の母の国際結婚で出生。兄弟がまだ幼い2、3歳の頃両親が離婚。父親はブラジルへ帰り、兄弟は母親と日本で生活していました。実は離婚した際に母親は日本の在留資格を失っていました。
在留資格とは、「日本にこういう条件でいていいよ」という資格のこと。母親は「永住者の配偶者等」という在留資格で日本に暮らしていました。よって永住者との関係を絶ってしまうと在留資格を失ってしまいます。それに伴って息子2人も在留資格を失います。在留資格が無い状態で16、17年間日本で生活していたそうです。日本の在留資格がないため、国籍があるブラジルへ強制送還されることに。この「強制送還を取り消して兄弟に在留資格を与えよう」というのが今回の裁判に事案です。
「言葉も文化も日本」である兄弟は、日本を去るべきなのか?
今回のこの事案で重要なことは、「この兄弟は全く悪くない」「言葉も文化も日本のものである」ということ。在留資格が無いまま日本で暮らそうと決めたのは母。兄弟は、親の都合で日本に来て住んでいました。日本でずっと暮らしているため言葉も文化も日本のもの。兄弟には全く責任はないにも関わらず、日本語しか話せないのに退去を命じられるのはおかしい話です。ブラジルへ行くにも言葉も知らないし、父とは幼い頃に疎遠となっているので顔も知らない。日本に留まるにも、在留資格がないと働くこともできないので生活費を稼ぐこともできません。確かに、母親は在留資格無しに日本に留まることを決めたので母親には責任があるかもしれません。しかし、だからといって兄弟には責任がないはず。このような状況で、本当に兄弟は日本を退去しなければならないのでしょうか。「このような場合には在留を特別に認めよう」という在留特別許可を義務付けようという裁判も、この事案は兼ねています。
「外国ルーツの子」周囲にいるかもしれない、という意識
今回のこの兄弟は、自分たちに在留資格がないことを周りには知らせていないとのことです。言ったら何をされるかわからない、どこかに連絡されるかもしれないからです。しかし、このように外国ルーツで同じように在留資格がなくて困っている若者は意外と多いとのこと。私たちは、このような人の存在を知らずに生活しています。
もしかしたら、リスナーの中にもこのようなことで困っている方がいるかもしれません。自分の周りにも「実は…」と悩んでいる方がいるかもしれません。「自分が悩んでいる、周りで悩んでいる人がいる」、そんな時は「栃木県弁護士会の外国人に関する委員会」に相談してみて下さい。弁護士に相談というとどうしても費用が気になってしまいます。が、外国人に関する案件の弁護士費用はなんと、日本弁護士連合会負担とのこと。このように相談できる機関があるのは頼もしいですよね。
中澤さんありがとうございました。国籍の問題は今まで考えたことがなく、私と同年代の若者が国籍の問題で苦しんでいることを知り衝撃を受けました。まずは私がこの問題について周囲の人に取り上げることで、少しずつでも知ってもらいたいです。そして、まずは実際に悩んでいる人と相談の窓口までとを繋ぐことができたらいいと思いました。(小林メイ)