「AIに仕事を奪われる」未来か、「機械に働かせて、好きなことする」未来か。…AI(人工知能)とBI(ベーシック・インカム)

「お金から自由になるにはどうすればいいか」考えた

 1月15日のみんながけっぷちラジオのゲストは大田原の出版社「那須里山舎」の白崎一裕さんでした。「ベーシックインカム・実現を探る会」会長として、働いても収入が安定しない社会をなんとかしたい、と10年前からベーシックインカム(BI)を広める活動をしてきました。白崎さん自身も7回転職し、収入が不安定なときもありました。そこで「お金から自由になるにはどうすればいいか」考え、BIにたどり着いたそうです。

 

「毎月8万円 国民全員に配る」とか。BI=基礎所得補償 

 BIとは「毎月、全ての人に、政府からお金が支給される制度」です。ここで重要なのは、「無条件で、個人単位に」ということ。所得にかかわらず、赤ちゃんからお年寄りまで一人一人に、です。BIの直訳は「基礎所得保障」。この考え方は相当古く、400年前からあるとのこと。

 社会保障には所得再分配機能がありますが、本当に必要な人に届いていないのが現実。日本では生活保護が必要な人のうち、実際に支給されているのは約20%。英国・ドイツでも60%です。でも、BIなら全ての人に届けられます。また受給資格の審査も必要ないので、莫大な行政コストもいらない。世帯収入は、むしろ増える場合もあります(月8万のBI:夫婦+子ども2人=32万円)。社会保障は大別して「貧困」と「障害」の2つの解消を目的に実施されますが、BIはこのうち「貧困」が、日本からすべて無くなる政策です。

 白崎さんは「果たして、働くことと稼ぐことが結びついているのはいいことなのか?」と問題を提起します。お金のために働き、人権や幸福まで奪われるのはおかしい。芸術・ボランティア(助けあい)・趣味・・・で人間のいろいろな面を生かせる社会がBIで実現するかも知れません。

 

AIにより、仕事の48%がなくなる。資本主義経済それ自体が崩壊!!

 BIは近年、政策として語られるようになってきました。2016年、スイスでBI導入の国民投票が行われ、賛成25%。フィンランドでは2年間のBI導入の社会実験が行われて2018年末に終了し効果を検証しているところ。2018年、イタリアでBI導入を掲げる「5つ星」という政党が政権を取りました。ほかにも、ブラジルやナミビアで社会実験が行われたり、カナダで計画されたりしています。

 政府の政策にまでBI導入が広がっている背景には「AI(人工知能)に仕事を奪われて、収入を得られない人が相当に増える」という未来予測=危機感があります。オクスフォード大学のレポート『雇用の未来』では10~20年後には労働人口の49%がAIに置き換わると予想。雇用だけじゃなく企業も無くなるのです。さらに、30年後には、日本の人口は8674万人にまで減少します。そんな未来を、私たちはどう生きていけばいいでしょうか。

 例えば資本家が株で企業とAI全てを所有すると一見、資本家(AI企業)の一人勝ちに見えますが、失業者が増えると商品を買う人もいないのですから「物が売れない」。自分の首を自分で締める結果になります。「消費者が失業すれば、購買力がなくなる」、つまり資本主義そのものが自壊していくと危惧してBI導入を考える企業家・資本家も現れました。

 

月8万円…「バイトせず、奨学金も借りなくていい学生」とか。「働かずに、子ども育てられる母子家庭」とか。

「仮に、BIを月8万円支給すると夫婦2人と子2人なら月32万円。ウツ病になるほど働かなくてもOKですね(もちろん働いてもいい)。母子家庭でも十分に子どもを育てられます。AIにできない歌を歌ってお金を稼いでもいい」と白崎さん。他にも、「学生なら8万円で暮らせるかもしれませんね。バイトしなくてもいい。その代わり一緒にご飯を作って食費節約し、助けあい(相互ボランティア)をする、なんてどうですかね」とラジオ出演者4人で盛り上がったトークをしました。

「BIが月8万なら、財源が115兆円必要です。例えば所得税なら、税率50%位にはなるかもしれませんが、実現は可能」と白崎さん。ちなみに日本の給料総額は215兆(2018)。このほかに法人所得もあり、法人税実効税率は約30%なので、実効税率50%とかにしてAIで儲かった分をどんどんBIに入れればいいだけです。(2018年上場企業の税引き後の純利益は29兆円)

 矢野コメントおじさんは「機械に働かせて、寝てればいいんだ」とAIとBIについて言ってました。

 白崎さんは「財源に所得税、消費税、相続税、新税…とさまざまな考え方がある」としながら、個人的には「税方式もあるが、政府通貨の発行」がいいとのこと。「日銀の異次元金融緩和の出口がない」ことに言及したうえで、「過去には、南北戦争時にリンカーン大統領がグリーンバックという政府紙幣を発行した例、昭和恐慌後の大蔵大臣、高橋是清の積極財政施策など、BIに近い政策の事例があります。さらに通貨発行権を日銀からより民主的な組織に移すべき」とも。

 BIはヘリコプターマネー(バラ撒き政策)のようですが、日銀・黒田総裁が頑張っても「出口が見えない状況」と比べれば、BIの実現はあながち遠いものじゃなく、私たちの時代に実現可能になるかもと思いました。

 

BIは、経済のデモクラシー 

「私たちが基本的人権をもち、一人一票をもっているみたいに、一人一人が収入を持つ権利がある」と白崎さんは言います。そのためには、デモクラシー=民主主義のありかたを変えることが重要です。私たちがどのような民主主義を望むか、どういう予算を組むかを自分たちで決めていく、自分たちで引き受ける。権利と責任を伴う制度です。

 私自身も「BIがあったらどうするだろう」と考えてみました。学生は、親や奨学金=借金に頼らなくても、大学に通えるかもしれない。女性も、自分自身のために仕事を選択できるようになるかもしれない。ラジオで白崎さんは「BIについて調べてみてください」とおっしゃっていました。色んな人のいろんな意見が出てきます。本も映画もあります。みんなで話して考えることが、民主主義をつくり、未来をつくっていくのです。3時間番組ができそうな熱い議論でした。(カサハラ)

ベーシックインカム・実現を探る会 http://bijp.net/