「街頭募金は、あしながの奨学金を知ってもらうきっかけ」

 今回は、あしなが学生募金事務局の田村由里さん(専門学校2年)に話を聞いた。春と秋の年2回の街頭募金活動を運営するため、ボランティアの募集や団体内募金のお願いを高校や大学、企業にする栃木のまとめ役のボランティアである。

・遺児学生の集いでの先輩との出会い

 田村さん自身も小学校6年生で父を亡くした遺児学生である。あしなが育英会の遺児支援の一つに遺児家庭の子どもたちが集まる「集い」があった。遺児学生や似たような境遇の高校生が3泊4日で合宿をし、過去や将来について語るというものだった。田村さんは高校1年生でそれに参加した。最初はあまり気が向かなかったそうだが、いろいろな境遇を抱えた同年代の高校生と、悩みや心の内を気にせず語り合えて、とても元気をもらったという。それまでは、介護の仕事をしたいという夢を金銭的な理由で諦めていた田村さん。この集いがきっかけで進学という選択肢が増えたという。遺児学生が普段学校では話せない悩みを打ち明けられる場はとても重要で、自分の未来をも変えることができるのだなと感じた。

 そして集いで一緒のグループになった一人の先輩から、局員(あしなが学生募金の事務局)になることを勧められたという。局員になって活動していく中で、先輩たちのあしながで「遺児学生を救いたい」という強い思いや、自分事のように悩んで考えてくれている様子に感動。また、他大学の学生とかかわるきっかけにもなり、あしながでの新しい出会いや考えがあった。そして何よりも活動が楽しいから今まで続けてこられたという。

・奨学金が親の医療費に持っていかれてしまう…

 田村さんのお母さんは持病があり、奨学金と同額が医療費になってしまう。同じように、奨学金を生活費として使っている人もいて、2つの奨学金を借りているうえにバイトをする生活になってしまう人もいるという。暮らすためのお金で精いっぱいで、未来のためのお金を作ることが難しく、進学の夢をあきらめてしまう。母親も子どもを心配させたくなくて仕事をするが、やはり正規雇用は少なく不安定な収入になってしまう。そのため、夜勤の仕事をかけ持ちしたり、土日に残業をしたりという生活になり親子で向き合う時間が少なくなってしまう。遺児家庭と両親のいる家庭の大きな違いは、子と向き合う時間があるかないかではないかと語った。

・奨学金の情報格差。中高生の遺児に伝えてほしい

 遺児学生の問題として情報格差があるという。奨学金について知る機会が少なく、進学の夢をあきらめてしまうのだ。田村さんは中学のころ担任の先生から教えてもらえたから、高校、専門学校で学べたという。でももし、先生自身が知らなかったら、伝えることすらできない。先生が知っているか知らないかで、人生が大きく変わってしまうのではないかと語った。特に民間の奨学金を知らない人はたくさんいるので,街頭募金をきっかけに「奨学金」を知ってもらい、新聞社やテレビ局がとりあげて情報が広がることを願っているという。

(加藤)