■集まった顔ぶれ+はじまり
当日は真冬の土間を会場に、多彩な顔ぶれが集まりました。現役の有機農家として真岡まんまる農園の丸山さん、同じく有機の農業法人の壬生ベジファーム蔵岡さん、鹿沼の農業公社の金田さん、中山間地域を守りたい農家民宿兼そば屋兼ピザ屋兼棚田オーナー制農家の平澤さん、栃木県生協連の赤羽さん、有機農業で卒論書いたスウェーデン帰り大学生遠藤さん、ベジファームで週一援農おじさんのVネット矢野さん、フードバンク県北事務所Vネットボラで市会議員の林さん、鹿沼でNPOの応援をやっている渡邉さん、元Vネット職員宮坂さん(途中参加)、そしてとちぎ夢給食プロジェクトの安田さん。
そんな顔ぶれの中、冒頭は平澤さんの、中越地震の際に震源の真上「震央」で被災したエピソードと、積雪6メートルを超える過酷な地域の中で、棚田を守り続けてきた実体験が語られると言う、スケールの大きな話からはじまりました。
以下は、当日のお話の記録です。
■「週1日手伝いし、現物支給」。週休2日のサラリーマンと共生しよう!(Vネット・矢野さん63歳)
有機農業が広がらないと小規模農家が生計を立てていくのは難しいと思う。今やっと国が「みどりの食料システム戦略」を掲げて推進と支援を始めましたが、後継者がいないのが問題です。
具体的に何してるかというと週に1日有機野菜の農業法人(㈱ベジファーム)に手伝いに行って、現物(米や野菜)もらう仕組みです。現場では、俺たちをG3(じいスリー)と呼んだりしていますが、楽しみながら動いています。これなら週休2日のサラリーマンも一緒に農業に関われる。ライザップとかのジムにお金を払って体を動かすより、畑で汗をかいて最高の野菜をもらう。そんな物々交換系が良いのではないか。5年前から密かに仲間を増やそうと活動し、1人(70歳)増え、77歳社長のもと3人でやってます。
■一般農家のイメージは「草だらけにするから貸したくない」(農業公社・金田さん)
鹿沼の農業公社は職員30人ほど、400haの農地で米・麦・大豆・イチゴなど栽培しています。市の農業公社でこのような取り組みは全国でも珍しい。私は、実際にトラクターに乗って山間地の放棄地(やる人がいないところ)を耕すなど現場作業もします。
有機農業に関して感じていることは、有機農業をやりたいという人への支援が難しい。理由は土地を持つ人が「借したがらない」などです。実際に草の問題でもめることもあった。地主さんには「家の前の畑に他人が入り、生活を覗かれるような不安」というプライバシーの感覚もありますし、一般農家の有機農業へのイメージは「草だらけにする」と敬遠されがちだと感じている。苦情が来れば僕ら公社職員が代わりに草を刈ったりすることもあります。また面積が小さい農家は銀行融資も受けにくいなど、お金の面でも難しいです。
■大規模化とスマート農業だけ国は補助。国の制度は「有機・小規模は不要」と言ってる(有機農家・丸山さん)
草刈りには気をつけていて、タネを落とさないようにしている。やはり地主さんへの配慮は必要。また年間50品目も作っていると、面積が広がっていくにつれ、労力も大きく大変になってくる。補助金制度を申請に行っても、大規模農家やスマート農業向けの国が推進する農業への補助金しかなく、小中規模農家が恩恵を受けられるようになっていない。点数化された項目ばかりが評価される今の制度では、僕らのような農家は国から「いらない」と言われているようで、人権がないと感じるほどの格差があります。
■分析:スウェーデン「有機を国策で推進」、日本は「50年ずっと草の根」(宇都宮大学・遠藤さん)
スウェーデンではEUや国レベルで有機農業への支援が手厚く、その基盤があるから経営は安定し規模拡大など事業を展開しやすい。世界中から農業ボランティアを導入する仕組みもあります。私も1年間農業ボランティアとしてスウェーデンに滞在しました。消費者にとっても有機野菜が当たり前に手に取りやすい環境ができている。
日本との違いは、「市民の意識が国の政策に反映される透明性確保」にある。政治の場に女性や母親の視点が多く入っていることも大きいと感じました。日本は「有機JAS法ができるまで50年ずっと草の根レベル」のままだった。ただ私が感じたのは、有機農業推進への意識を持った方々の思いの強さは、日本人の方がずっと強いと思った。制度に守られたスウェーデンに比べ、支援がない中で踏ん張っている日本の方々の執念はずっと強い。この熱量をどう政策に繋げるかが大切だと思っています。
■食は産業ではなく「命」そのもの。「誰にでも公平に保障される」もの。(NPO応援の渡邉さん)
会社勤めの知人から「米農家は補助金で食っている」という批判聞いたことがある。このような考えは、一定の人が持っている感覚なのではないだろうか? 食というものが「産業の一つとしてしか」捉えられていない。「食は特別」である。食は命をつなぐもので、「誰にでも公平に保障されるべきもの」として捉えられれば、変わるのではないか? 金田さんが言うように、日本の「工業輸出の引き換えに農業が犠牲になってきた」歴史背景を知れば、見方も変わるはず。また環境に寄与する側面など、例えば生き物が増えたことなど、目に見えない価値を数値化して、みんなで応援したくなるムーブメントを作っていきたいです。
■生協の提携で「有機をメジャーに」(栃木県生協連・赤羽さん)
有機農業推進について「どうやったら有機農業が広がるのか?」を常に考えていますが、現場の皆さんのご意見をいただきたいと思い参加しました。生協としても組合員さんに有機の価値をどう伝えるか試行錯誤しています。ただ、生協のカタログ掲載は3~4か月前に決まるという仕組み上の制約があり、現場の「今、これが旬でたくさん取れた!」という突発的な供給に即座に応えにくい構造的な課題もあります。 このような場を通じて現場のリアルな声を拾い、食の安心・安全を求める生活者の視点と農家の現状をつなぐ役割を果たしていきたい。今日のような明るい未来に向けての学びやアイデアを、積極的に伝えていきたいと思っています。
■「本気の人+普通の人」のセット。楽しく軽やかに関わる仕組みが持続可能性 (ベジファーム・蔵岡さん)
丸山さんが言うように、専業農家だけで踏ん張るのではなく、農家と一般の人との「中間」にいるような関わり手がもっと増えればいいと感じています。私たちが取り組んでいる農業も、単に生産するだけでなく、誰もが楽しく関われるような形を目指しています。特定の強い意志を持った人たちだけのものにするのではなく、もっと軽やかに、多くの人が参加できる仕組みが大切。今日の話にあったような「竹炭」の活用や、ボランティアの仕組みなどワクワクするような取り組みを通じて、有機農業が特別なものではなく、様々な方面に自然に広がっていく未来をつくっていけたらと考えています。
■まとめ:有機が当たり前になるため「制度」を変え、「参加」を促そう (とちぎ夢給食プロジェクト・安田さん)
日頃、なかなか一堂に会することがない人が集まり、こうしてお話しできたことが本当に嬉しかったです。私は、子どもたちの未来のためにも、豊かな環境を守るためにも、有機農業が「当たり前」になる社会を目指して日々活動しています。
今日は小規模農家や有機農家が直面している切実な実情や、大規模化ばかりを追い求める制度の壁など解決しなければならない課題を再認識させられました。
だからこそ、今日こうして皆さんと顔を合わせ、対話できたこと自体が大きな事だと感じています。途中から参加された宮坂さんの「実家の農家を継ぎたい」という真っ直ぐな想いや、矢野さんが楽しみながら実践している「G3」の取り組みなど、課題を乗り越えるための大きなヒントをいただきました。「学校給食を有機に」という私たちの願いもこうした一人ひとりの「農」への関わりが重なり合って初めて、実現していく。制度を変えるのは時間がかかるかもしれませんが、今日ここから、地域のみんなでワクワクするようなうねりを作っていける。そんな確信を持つ時間でした。今日は皆さん、ありがとうございました!
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