l NPO設立のきっかけは、困っている仲間助け
カストロさんと奥様のモレさんはそれぞれ日本に16年、22年住んでいる。モレさんが日系3世で、仕事をきっかけに日本に移住した。NPO設立のきっかけは、モレさんの人助けの活動だった。モレさんは日本語をあまり話せない。わからなければすぐ周りの人に尋ね、困ったら周りの人に尋ね・・・を繰り返すうちに今度は「自分が人助けをする」ようになり、いつしか「困ったことがあればカストロさんとモレさんを頼ればいい」という地域のよりどころになっていた。
最初は、川崎の在留外国人支援NPOでボランティアしていたが、真岡から遠く制限も多かったため、地元にNPOを設立することを決意。群馬に住む通訳のカブレラさんとは川崎のボランティアで出会い、一緒に活動することを決めたそうだ。「言語の壁が一番大きかった」と振り返るが、9歳から日本に住み、大学まで出たバイリンガルのカブレラさんとの出会いがあってNPO法人希望のタネを設立できたという。
l お金がなく病院行けない、医者の言うことがわからない。フードバンクで見えた課題
希望のタネでは、この12月、1月、3月に商品配布会を行った。第2回には200人を超える人が来場し、アンケートでは、出身国がペルーとフィリピンが70人以上、ブラジル23人、コロンビア、ニカラグア…と続く。私が驚いたのは、生活習慣病の在留外国人が多いということであった。糖尿病は100人、がん5人、精神疾患…とある。カブレラさんはこの点について「言語の壁が大きい」と訴える。まず貧困のため病院に行くお金がない。次に病院へかかっても医者の言っていることが理解できず、摂生、生活習慣などの治療をすることができないという。私を含め日本人は在留外国人が病気で苦しんでいることに気付いていないだろう。
l 帰っても、仕事も治安も制度もない
それではどうして「言語も通じない、文化も違う、豊かな生活もできない、定職に就けない」ような日本で働くのか。多くの人は「自国に帰って働けばいい」と考えるだろう。しかし、これはまさに「日本人の死角だ」と私は感じた。たとえ文化も言語も何もかも違う日本だとしても、自国で働くよりは安心で安全だという。日本の工場はペルーよりは稼ぐことができるし、なによりも治安が良い。社会保障制度も整っている。私たちは日本に住んでいるからこそ生活水準の高さに気付けないのだ。
l 優しい気持ちも「意図しない意味で伝わる」。文化と言葉が壁になる。
最後にカブレラさんが通訳という仕事を通して感じていることが印象的だった。「異なる国籍の人が交流をするとき、どちらも優しい気持ちをもって接している。しかし文化と言葉が壁となり衝突してしまう。意図しない意味で相手に伝わってしまうことがよくある。しかし、互いに優しい気持ちを持っていることを忘れず、異なる言語、異なる文化であることを理解し、相手の文化を尊重しあうことでよい関係が築ける。」という。彼らの活動がだれかの希望のタネとなって異文化交流が進んでほしいと願う