【働きづらさの正体②】就職決まったらお終い、じゃない伴走支援

40代でてんかんを発症。免許返納、続く転職。

 

 宇都宮で一人暮らしをしている石井さん(仮名・55歳)は、大学を卒業後大手企業に勤め、働きながらさまざまな資格を取得してきた。順調に仕事をこなしていたが、40代でてんかんを発症。業務では自動車を運転することもあったので、上司に引き止められながらも退職を選んだ。バイクの運転が好きだったが、兄弟に言われて運転免許の返納もした。

 その後数年は療養に専念し、障害年金を受給し始めたが、貯蓄が少なくなったことから自動車部品製造のパート勤務を開始。急いで探した仕事は自転車で1時間かかるところにあった。体力には自信があったので6年間必死に通ったが、限界を感じ退職を決意。

 今度は近所の病院での調理の仕事に就いた。新卒で働いていた時に調理師免許を取得していた石井さん。そこでも真面目に勤務したが、5年ほどで契約が切れた。親の介護の経験があったので、次の仕事は介護職と決め求人を探した。

 

 「てんかん」というと不採用になる。10年以上発症してないが…

 服薬を続け10年以上てんかんを発症しておらず、医師からも就労の許可が出ているが、面接でてんかんであることを伝えると不採用となる。何かあったときのためにてんかんを伏せて就職することは考えなかった。続く不採用の連絡に精神的にも落ち込んできた。

 そんな時にフードバンクを利用し、ユニバーサル就労(UW)の存在を知ることになる。石井さんには、数年前のてんかん発作が関係しているのか、少し高次脳機能障害のような様子が見られる。ところどころ書けない漢字があったり、受け答えに違和感を覚えることはあった。しかし体力もやる気も社会性もある石井さんが、病気のために働けずにいることがもったいなく感じた。自力での就職活動と並行しながら、UW相談員との面談が始まった。

 

働きづらい理由は、てんかんだけじゃないかも。

 障害者雇用分野で活躍しているスタッフによるUWの面談では、30代でアルコールによる病気を発症していたことが分かった。フードバンクでの面談では聞き取っていなかったことだった。今まで気持ちを聞いてくれる人、一緒に考えてくれる人がいなかったのだろうということも推察された。

 もともと熱心に就職活動をしていた石井さんは、UWの面談をした数日後に自力で探した病院で働くことが決まった。「働きづらい理由がてんかんだけではない」と感じていた我々は一抹の不安を抱いていたが、いちおう石井さんの新たなスタートを応援した。

 ところが、病院での勤務が始まる前から、何か不安なことがあるとUW相談員に電話が来る。「風邪気味だが職場に行ってよいか」など、本来であれば真っ先に職場に連絡するような内容の時もある。UWの枠で決まった就職ならば、本人と職場の間に入ってやり取りしてフォローすることも可能だが、今回は自力で見つけた就職先。こちらは職場と直接やり取りできないもどかしさを感じる。しかし、今まで一人でやってきた石井さんに相談相手ができたことは大きい。UWでできることを模索しながら、これからも付き合いが続いていくだろう。(松)

 

※ユニバーサル就労は、全ての働きづらい人のための中間的就労の仕組みです。障害者・若者以外にも働きづらさがあります。仕事になじめない人の就労支援をしています。電話028-622-0021(とちぎVネット内)