「原発事故問題の本質とは」若者が被災地を訪れる

 東日本大震災による福島第一原発事故。

 テレビやラジオ等のメディアを見聞きし何となくその実態の大枠はわかるが、被災者のリアルな声はあまり聞いたことがない、という人は多いのではないか。

 私も、以前はその一人だった。しかし、「次世代に伝える。原発避難11年目ラジオ」のパーソナリティを担当したり、原発避難にまつわる様々なイベントに参加したりすることで、避難者の生の声をたくさん聞き、問題の本質を考えるようになった。そのような経験の一つとして、7月3日(日)に実施された被災地ツアーがある。

 

○取り壊した避難者の自宅跡にそびえ立つ雑草

 はじめに、双葉町から小山市に避難した北村雅さんの自宅跡を草刈りした。原発事故の影響により住めなくなってしまった自宅をやむを得ず取り壊す避難者が多く、そこに生い茂る雑草の処理に困っている人がたくさんいる。高々と立つ雑草を実際に見てみて、その問題を実感した。草刈機や鎌などを使ってしっかりと処理することができた。

 

○「きれいなエネルギー」原子力の尊さを訴えたポスター

 次に、双葉町にある「東日本大震災・原子力災害伝承館」に行った。館内には、震災にまつわる様々な展示物があった。なかでも印象的だったのは、原子力発電を賛美するようなポスターの数々である。今でこそ原発反対を唱える人は多いが、事故前はいかに原発がクリーンで安全なエネルギーとして見られていたのかがわかった。「ぼくたちのみらいをはこぶ原子力」というタイトルで小学生が描いたポスター。実際に運ばれたのは、果たして“明るい”未来だったのだろうか。

 

 

○「住民を町に戻らせるのは、早く死ねっていうことですか?」

 最後に、津波被害を受けた浪江町の請戸小学校を訪ねた。そこには、損壊した施設の様子だけではなく、被災者のリアルな証言も残されていた。なかでも印象的だったのは、「住民を町に戻らせるのは、早く死ねっていうことですか?」という、ある原発避難者の言葉。現在、被災地である福島県沿岸部の各市町村では、少しずつ避難指示解除が進められ、国は住民の帰還を望んでいる。それにもかかわらず、被災地では、生活するうえで必要なインフラや、病院、学校、店、働き口などが未だに不十分であり、安定した生活をするのは難しい状況にある。そんななか、本当に住民を帰還させて良いのだろうか。