宇都宮初! 星ヶ丘中 制服リサイクルバンク

 

子どもたちのために、何かできないか。

民生委員3年目のチャレンジ

 2月26日のゲストは星中制服リサイクルバンク実行委員会の稲葉綾子さんでした。稲葉さんは戸祭地区の民生委員も務めています。民生委員、正式には「民生委員・児童委員」といい地域の相談役です。地域包括センターや市役所、社会福祉協議会、児童相談所…など専門機関に支援をつなげる役割もあります。

 制服バンクのきっかけは、昨年6月の地区コミセン(小学校区毎にあるコミュニティセンター)でのボランティア養成講座。講師は今ラジオにでているVネットの矢野さんで、稲葉さんはそのとき初めて宇都宮の子どもの貧困や、制服リサイクルバンクについて知ったそうです。

 子どもの7人に1人が貧困と仮定すると、理論上は宇都宮市には1万2455人、この地区にも100人は困窮している子どもがいる(推計)という事実。稲葉さんは「民生委員でも何かできないか」と思ったそうです。また、稲葉さんには3月に星ヶ丘中学校を卒業した娘がいて「星ヶ丘中学校の制服は3年使ってもきれいで洗濯もOKという丈夫な制服。捨てるにはもったいない」と思っていたそうです。

 

あれよあれよ、と現れた協力者。

1か月で保管場所と回収場所が決定! 

 県内の先行事例として足利制服リサイクルバンク、鹿沼東中制服リサイクルバンクがあります。足利は市内の中学校の制服を統一していて、30年間も制服リサイクルを続けています。鹿沼では2017年に自治会長さんや民生委員さんが中心になり鹿沼東中制服リサイクルバンクが始まっていました。鹿沼・宇都宮は中学校ごとに制服が違います。

 制服リサイクルバンクに興味を持った稲葉さんは、戸祭地区民生委員の会長の菱沼さんに「やってみたい」と提案。さっそく鹿沼東中制服リサイクルバンクの川田さんと連絡を取り、実際に見学にも行ったそうです。

 実施にあたって浮かび上がってきた課題は、保管場所。ちょうどその頃キッズハウスいろどり(12月のラジオで紹介)が戸祭地区にオープンする時期で、運よくその2階を保管場所として借りられることになりました。コミセンも回収場所として協力を申し出。そして昨年7月、なんと着想から1か月に満たない期間で、課題の回収場所・保管場所が決まりました。コミセンではフードバンクの「きずなボックス」を設置していたこともあり、その隣に「制服リサイクルボックス」が10月から設置されました。

 

「大変だけど、やればできる、やってよかった」

踏み出せば、協力してくれる人がいる

 地域の理解を得るには少し時間がかかったそうです。でも、回覧板に載せてもらえるには自治会の許可が必要です。稲葉さんが自治会の会合の場で説明したところ、満場一致で了承を得ることができました。そして「制服回収のチラシ」を回覧板で回し、地域の掲示板やお店にポスターをはり、戸祭小学校の6年生に制服譲渡会の案内を配り…。地域の人や学校の協力がありました。最終的には男女合わせて35着の制服が集まり12月には戸祭コミュニティセンターで譲渡会を開催しました。当日は始まる前から集まるお母さんもいて、稲葉さんは「制服リサイクルバンクは必要とされているな」と実感したそうです。

 集めた制服は、民生委員さんがボランティアで名入り刺繍を取り、染み抜きや洗濯をしました。なるべく安いクリーニング屋さんを探してクリーニングもしました。

 中学校の制服は夏服、冬服、体操着などで約13万円。そのため、入学前の出費に不安を持つ家庭も少なくありません。近年、兄弟のいる家庭は少なくなり、近所づきあいも減っています。

 また、シングルマザーや共働きで忙しく働いていてPTAに入らず、制服お下がり情報が入ってこない人もいます。星中制服リサイクルバンクでは詰襟やブレザー1200円、体操着300円で販売。優良なのは制服リサイクルバンクを持続的に運営するため、そして新しい持ち主である中学生に、気持ちよく使ってもらうため(クリーニング)です。

 「大変だったけれど、やればできる、やってよかった」という稲葉さんの言葉は、とてもあたたかいものでした。

 

1地区5人でできる!

「制服リサイクルバンクを当たり前にしたい」

 稲葉さんたちは制服リサイクルバンクを星ヶ丘中学校の3つの小学校全体に広げたいと考えています。そこで全部の小学校区で回覧板をまわし、成人式や今年度の卒業生向けに制服回収チラシを配りました。今では、毎日のようにコミセンに制服が届けられるそうです。2019年5月の在校生向け譲渡会では、部活後でも来られるように、午後7時まで開くことにしたそうです。その日に都合が合わず来られない人にも対応したいと考えています。

「制服を次の人に回すということが、当たり前になってほしい。大事にして、次に人に使ってもらう気持ちが、大人にも子どもにもあるといい」と話す稲葉さん。鹿沼東中から星中につながったように、ノウハウを伝えていけば、一地区に5人いればできるのではないかとのことです。稲葉さんも、3人の中心メンバーで活動し、月1回の会議では10人ほどで話し合っています。 

 私(笠原)の出身中学校にも制服リサイクル制度がありました。PTAに制服リサイクル担当の委員会があり、学校の職員玄関などに回収ボックスを置いて制服を誰でも入れられるようにし、授業参観など保護者の集まるときに販売会をしていたそうです。ただ、「3年で卒業するPTAだけに任せるのも少し難しいかな」と、コメントおじさん。稲葉さんのように、地域の人(民生委員さんなど)が継続的して取り組むことに希望があると話していました。

 子どもを育てるには手間がかかる、とコメントおじさん。「当たり前のように子どもに手間をかける地域へ」と挑戦は続いています。(笠原)