平和とは「圧力・強制がない中で、自由や希望を見出し、自分で物事を決められる世界」。ミャンマー戦争×地震

5月13日は、戦争と平和ラジオ。「CODE=海外災害援助市民センター」で事務局長を務める吉椿雅道さんをゲストに招いた。CODE(コード)は阪神・淡路大震災をきっかけに世界各地の災害を支援しようと生まれたNPOである。特に「最後のひとりまで」支援を行うことを重要視し、政府など大きな支援から取りこぼされてしまう人を積極的に支援している。

 

吉椿さんは3月28日に発生したミャンマー地震の支援を現地に出向いて行なった。ミャンマーは2021年に発生した国軍のクーデターとその後の軍事政権により、民主派や少数民族との内戦が全国で続いており、危険と隣り合わせ中の支援となった。

内戦下での緊迫した支援。「現地人に扮装して検問を通過」

内戦下での支援は命の危険がたくさんあった。ヤンゴンから被災地マンダレー(600km)では、数々の検問を突破するため現地人に扮装した。「外国人と分かると拘束される」ので常に気を配った。軍事政権は、国内の状況を国外に知られたくないのだ。また、災害後、国軍と民主派が「停戦」を結んだものの、まったく嘘で、停戦後に国軍の空爆が160回もあったという。

「現地NGOと一緒に活動するが『どの団体と何をした』とは、日本でも言えない。それが分かると相手も自分たちも命を狙われる」という。内戦下での支援の難しさを目の当たりにした。世界では様々な戦争、内戦が起きている中で「災害支援をどこまで、どのようにできるのか」を課題視していた。

 さらに、支援は、緊急支援だけでなく国の再建(復興支援)もある。しかし、ミャンマーでは国軍と反政府軍という二つの勢力がぶつかるため、国の復興計画が立つこともないだろうと言う(情報そのものがない)クーデター後の経済破綻で中間層が消滅し、失業した若者も国外に出ていることもあり、経済の再建すらままならない。2017年に24.8%だった貧困率は、クーデター後の2023年には49.7%になり、この震災でより貧困化が進んだという。

政府が機能してない。沼地をゴミ集積場にしてその上に小屋が建ち大きなスラム街ができた。地震でメタンガスが噴出。引火して「地面から炎が噴き出して、400軒の家が焼けた」という。こんな事例は聞いたこともないと吉椿さん。物資はなく、ブルーシートで雨をしのいでいる。「これからは雨季で一番暑い時期、感染症や熱帯病のデング熱が心配だ」と吉椿さんはいう。

 

若者のエネルギーが希望。苦しくても希望を持つこと

このような苦しい状況でも希望を見たと語る吉椿さん。ミャンマーで行われた水かけ祭り。祭りで爆発する様子に「この若者のエネルギーがなにか国の力に代わるのではないか」と考えた。また、能登半島地震の支援ミャンマー人とボランティアに行った。能登の被災者と楽しそうに話をする場面を見て、「内戦と災害では被害は違うけれど、痛みを分け合うという点では、こんな関わり合いは重要だ」と述べた。

 

日本の報道では悲惨な現地の状況しか伝えられないが、望みもあることも伝えなければならない。NGOは現地の状況を日本人に伝えるのも仕事であり、ここにも力を割く必要がある。また、受け取り手の私たちも偏った報道ばかりでなく、広く情報を知り学ぶ姿勢が求められる。

日本は「平和」なのか? 圧力×不自由×希望がない社会かも

 数々の支援や人と関わる中で吉椿さんは「平和」とはなにかを考えたという。平和=戦争がない世界ではなく、「平和とは圧力・強制がない中で、自由や希望を見出し、自分で物事を決めることができる世界」ではないかと語った。つまり今の日本も「平和」だとは言い難いのである。日本の若者は窮屈な社会で生き、常に未来への不安を持っている。私たちはこの「日本の平和」に疑問を呈さなければならない。特に若者は、「エネルギー」という希望を持っている。未来のために自らの行動力をこの社会に活用していくべきだと思った。

「ちょっと待って!」その寄付、本当に大丈夫?

 コンビニやスーパー見かける「ミャンマー地震の募金」。吉椿さんはこのメジャーな場所にある寄付に警鐘を鳴らした。「この寄付が国軍側に回ってしまう可能性がある」という。実は、3年前の「ウクライナ政府への寄付」も武器購入したかもしれないという。私たちが善意で入れた寄付が、武器の購入に使われることが否めないのである。内戦がない平和構築にもつながらない結果になるのだ。「寄付をするなら、そのお金がどこに使われているのか、寄付口は本当に信用があるのか」を考えなければならないという。さらに、現地の状況や内戦についてなど、私たちは知るべき事実が山積みである。私たちは「寄付」の重みを理解し、いま世界で起きている戦争、紛争についてアンテナを張る必要がある。(ラジオ学生菊池)