6月25日のみんな崖っぷちラジオ×次世代に伝える原発避難13年目ラジオでは、フリーライターの吉田千亜(よしだ・ちあ)さんをゲストに迎えた。千亜さんは、東日本大震災から被害者や避難者の取材・サポートを続けている。著書に、『ルポ母子避難―消されゆく原発事故被害者』(2016)や『孤塁―双葉郡消防士たちの3.11―』(2020)などがある。千亜さんがヒアリングをはじめたきっかけは、電話相談よりそいホットラインで若者の相談が増えていたことで、そこから岩手県・宮城県・福島県で当時6歳~19歳だった人を対象にヒアリング調査を始めた。千亜さんはヒアリングを通して1人1人の経験を引き出し、社会から見えにくい声を届けている。今回は若者の視点で見た原発被害をテーマにお話を伺った。
「お金事情」「孤独感」。人間関係を引き裂く数々の要因
東電による賠償金額は福島県内で居住制限区域・帰還困難区域・自主避難対象区域などで異なっており、その差は数十万円から数百万円と非常に大きい。福島県内ではそのような区域によって異なる賠償金額が具体的に報道され、必然的に他人の財布の中身が分かってしまうという。子供だった当時は大人の金銭事情を知らなかったが、大人になっていくにつれてお金によって悩まなくてよかったはずの新たな人間関係の問題が出てくる。また、親についていって避難し地元を離れたことで、幼なじみに全く会えなくなり孤独感を抱く若者も多い。思春期という難しい時期に何気ない友情を突然失ったコンプレックスや、避難先の環境でいじめを受けたとしても親も大変な状況にあるから相談できず、周りに頼れる人がいない。実際に千亜さんがヒアリングをした半分以上の若者が不登校を経験している。
選びたい道なんて一つもなかったのに「あなたが選んだ」と言われる。
一般的に、子供は大人の庇護の下にあると思われている。しかし、千亜さんがヒアリングを行った若者たちは決して全員が大人から守られているわけではなかった。例えば、学校が終わるとそのままスーパーへ買い出しに行き、家に帰ると家族の世話をするヤングケアラー。親同士の喧嘩の仲裁役になり家族の平和を保とうと努めるのも日常だ。1人1人が必死で生きているとき、必ずしも子供は守られる存在であるとは限らず、最も気づかれにくい存在なのかもしれない。彼らは「選びたい道なんで1つもなかった」にも関わらず、周りからは「あなたが選んだ道なのだから」と言われ、理解されないのだ。
(ラジオ後記)原発避難は「過去の問題」ではなく、たった今起きている現在進行形の問題であると痛感した。時間が解決してくれることは無なく、かえって問題が深刻化・不可視化されていくように思う。だからこそ、千亜さんのようにヒアリングを通して1人1人の声と向き合うことに大きな意義があると思った。皆さんにも、ぜひ千亜さんの著書を手に取っていただきたい。(ラジオ学生とま)
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