今回は、コメントおじさんの矢野正広さん(61)が運営するとちぎコミュニティ基金(以下、とちコミ)について話を聞いた。
とちコミは、世のため人のために活動する団体を応援するために、お金や人集めをし、助成(プレゼント)している。いわば支援団体を支える団体だ。2007年から2022年までの15年間で1億2千万円を助成したという。知名度もなく、かつ地域限定の助成財団としては目覚ましい数字だ。全国ではここ10年でとちコミのようなコミュニティ財団が増えてきたが、それでも30団体程度。栃木にあるというのはすごいことだ。
魔訶不思議! 「行為の寄付」は、もらいやすい
とちコミが支援するのは、ボランティアの中でも「公共性」のあるボランティア組織である。個人のボランティアは、「自分がやればボランティア」になる。とちコミは、世のため人のために、一定の水準で活動ができる公共性のある「組織としてのボランティア」を対象としている。
寄付を集め・配ることで運営されているとちコミだが、寄付はお金ばかりではない。物品や能力・知識の寄付(行為の寄付)もある。お金と人とアイディアを組み合わせながら、団体の援助を行っている。
とちコミのお金だけではない支援は、「寄付をもらう側の負担感をなくす」ことにもつながっている。矢野さんはもらう側の負担について、震災時のがれき撤去のボランティアでの経験を話してくれた。家が壊れている農家のおじいさん。がれき撤去を手伝おうとしたが、断られてしまった。しかし矢野さんが「お金もいらないし、あとくされもないですから」と言うと、手伝えた。
矢野さんは、「おじいさんのように『やってもらったら返さないといけない』と思う人は田舎の人に多い」という。そういう人にもお金ではなく、(ボランティアで)物や能力、知識、技能を寄付することで「生々しさが消え」、受け取りやすくなるのかもしれない。
生々しさとは「お返ししないといけない義務感」であり、「相手へのお礼」意識である。伝統的な日本の村社会は相互扶助としてこの「受け取ったものへのお返し」関係を作ってきたが、それは「自分も返さなくてはいけない」義務感・負担感を生み、時には息苦しいコミュニティになるという。「個人でなく組織(NPO)で行うところも顔が見えないので、生々しさが消えますね」と矢野さん。
寄付で増える、もうひとつのお金の価値!?
寄付は、日常行うお金と商品を取り換える経済活動ではない。スーパーでお金を払えばお菓子が買えるのと違い、寄付はあげるだけ(贈与)であり、相手から見返りは返ってこない。しかし見返りがないからこそ「寄付には思いがのっている。呪い・願いみたいなもの」と矢野さんは言う。相手に自分のものあげる(寄付)とき、その価値は自分が使うよりも高くなるのだという。
だからこそだからこそ、支援者は寄付金の使い道が気になるのだ。自分がお菓子を買ったときには気にせず使った千円が、寄付となるとその価値が何倍にも感じる。そのためとちコミでは、寄付の使い道を示すなど寄付者への情報開示を欠かさない。
矢野さんは「とちコミに寄付すれば、地元でいいことをやっている団体に行き渡ることを知ってほしい」と今後も寄付者(いいことやる人)を増やすために取り組んでいくという。(鈴木)
*おしらせ
近日中に、とちコミのしくみや活動詳細についての記事も公開予定!