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12月20日がけっぷちラジオ ほぼ新卒でNPO!?立石さんの挑戦は続く

 今回は、NPO法人そらいろコアラの立石香織さん(25歳)に話を聞いた。立石さんは、新卒で入職した放課後等デイサービスを運営する福祉施設を2年で辞め、20225月そらいろコアラに再就職した。ここは2020年にできた妊娠出産子育て世代への支援をおこなっているNPOだ。児童虐待や育児放棄(ネグレクト)が起きないように、育児困難なお母さんを妊婦の段階からサポートするのが役目である。安定した職を捨ててまで、彼女を動かしたものはなんだったのだろうか。

 

子育て大先輩の「だいじょうぶ」は魔法の言葉。「コアLINE」相談。

 現在、立石さんは社会福祉士と保育士の資格を活かしてコアLINEでの相談員や子どもの居場所事業の管理をおこなっている。

 コアLINEは専門知識を持つボランティアの相談員に妊娠や子育ての悩みをSNSLINEで相談できる。相談員は医者や助産師など20人。立石さんも社会福祉士と保育士の資格を持ちつつ役所との窓口に。コアLINEは資格がなくても「子育ての大先輩」も重要だ。「子育て経験者のだいじょうぶは、本当にだいじょうぶに思えてくるんですよね」とお母さんを勇気づける魔法の力があるという。居場所事業でも同様に、子育ての大先輩は現役世代の大きな力になる。子育てや発育、困窮に悩む相談でも、資格と経験の両面でサポートできるのがそらいろコアラのよいところだ。

 このような妊娠から子育てまでの一貫した支援は、誰もやっていないとコメントおじさん(矢野さん)は言う。そらいろコアラと立石さんはその先例となるべく、今後も行政や病院と連携を取りながら、安心して妊娠出産ができる社会を目指し、尽力していく。

 

子どもと家族に直接かかわりたい!! 「安定」より大切だった「やりたいこと」

 多忙な日々を過ごす彼女だが、なぜ安定した福祉施設を辞めてNPOに入ったのか。福祉に興味を持ったのは、高校生のころに見た「赤ちゃんポスト」の映像がきっかけだった。中絶や堕胎の現実もさることながら、子を産まざるを得なかった親が虐待してしまうことも知った。「虐待をなくす支援をしたい」と福祉を志した。

 それは最初の職場に入社後も抱き続けることになる。「これがわたしのやりたいことではない」。働くうちにそう感じ始めた。そこで「子どもと家族に直接的に関われるならボランティアでもいい」と仕事をしながらやりたいことができる道を探していた。そのときに以前から活動を注視していたそらいろコアラの活動が目にとまる。さっそく「社会福祉士と保育士の資格を持っています」とツイッターでDMを送った。すると、すぐに理事長から「ぜひ電話しましょう!」と返信が来た。最初はボランティアでと思っていたが、職員として働くことになった。

 一般的に安定しないと言われるNPOに入ることに不安はあった。しかし「いつ死ぬかわからない!やりたいことをやる」という思いで決断した。今も後悔はしていない。みえる世界も広がり、前の職場では知らなかった支援も行える充実感がある。今後も自治体と家庭の橋渡し役として、誰も取り残さない支援を目指していく。立石さんの挑戦は始まったばかりだ。

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 妊娠から子育てまでの継続的な支援は、栃木県ではそらいろコアラが初だという。昨今、乳児の死体遺棄や虐待の事件のニュースを見ることも多い。しかし行政の対応の悪さを批判するなど、起きてからの対処に焦点を当てただけの評論ばかりが目立つ。問題は「事件化する前に寄り添えなかったか」に焦点が当たるべきであり、そのような制度設計をしていない現行の周産期妊婦の支援制度の手薄さであろう。無縁化、孤独・孤立化が進む日本社会。その意味でそらいろコアラのように、悩みに向き合い伴走していく支援方法の必要性はさらに高まっていると言える。

 

宣伝:HPからコアラインを追加できます。ツイッターやインスタグラムもやっています。詳しくは『そらいろコアラ』と検索!!