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読みごたえあり‼いろんな「働く」が叶う場所——労働者協同組合という提案

「やりたい」は自分の手で叶える――10月施行の労働者協同組合法で——

ワーカーズコープのセンター事業本部長(日本労働者協同組合連合会センター事業団/以下:ワーカーズ)の小白井加代子(こじろいかよこ)さんからお話を聞いた。

小白井さんのいるワーカーズは「労働者協同組合」という法人で運営されている。この組織は、簡単に言うと「働く人たちが、自らお金を出し合い(出資)、事業=働く場を作り(起業)、話し合いによる経営で、自ら働く」組織である。

 会社(株式会社)は出資者と経営者、さらに労働者が皆別々だ。このことで資金調達の容易さや、経営の効率化(合理化)が生まれるが、同時に効率化と称した働く人の「首切り」も行われる、そんな問題点も多々ある。

 一方、労働者協同組合は「やりたいことがある!、困っている人を助けたい!、でも銀行から借りられない、一人では限界がある」。そんな人が協同組合を通し、賛同者を3人以上集めれば、やりたいことが自分たちの手で実現できるシステムになっている。今年10月に「労働者協同組合法」が晴れて施行されることになった。「協同組合」方式の団体の参入や、この制度を利用して事業を起こしたい人も増え始めているようだ。今後の「働き方」の一つに加わる「労働者協同組合」に迫った。

 

自ら出資し、自ら働き、共同で経営し、「協力債」で資金調達!

 「働く人たちが、自らの給料からお金を出し合い、事業を作り、話し合いのもと運営する」。こんな運営があったらとても素敵だろうと感じた。だが一方で、「そんなに都合よく会社は回るものなのか」と疑問も生まれた。はたしてどんな仕組みで協同労働は実現しているのだろう?

 ワーカーズは15万円から出資金を集めているが、本当は「自分の給料の2か月分」が理想だそうだ。何も知らない私は「2か月分なんて高すぎる!!」と思ったが、実は2か月分は「出せる人は出す」という基準らしい。このシステムは生協の増資システムと似ており、出資したお金を積み立てていくシステムだ。

「新しい事業が始まり、その利益が入ってくるのが翌々月。だから2か月の間、そこで働く人が路頭に迷わないように」と小白井さんは言う。

実際に、お金を出してくれる人は「自らもお金を出してもらった経験を持つ人」だという。自分が助けられた恩を次の人に返しているイメージだろうか。このような「助け合い」のサイクルで組織は運営されている。

 

利用者にも助けを借ります「協力債」

しかし回るお金だけでは資金に限界がある。資金を確保するやり方の一つが「協力債」だ。協力債は「新規事業立ち上げの際、利用者が利子なしでお金を貸してあげる」資金で、1年経つと「返金申請」ができる小白井さんいわく「意外とみんな覚えている()」ので、一年後にはしっかり返済申し込みがあるという。しばらく預けておくことも可能であり、都合に合わせ引き出せる。

例えば、最近新築されたワーカーズの「のはら園」も、協力債と組合員の出資で作られた施設。のはら園は那須塩原市にある障害福祉サービス(雇用契約を結んで働くのが難しい方の就労訓練施設・障がい児に特化した放課後等預かり所)で、ここを必要とする保護者(親)はもとより、おじいちゃん、おばあちゃんまでもが協力債を出してくれたという。まさに「協力」債である。労働者協同組合は組合員だけのものではなく、協力してくれる利用者とその家族、また全国にネットワークを持つワーカーズの組合員の協同があってこそ成り立っている。

 

利益も「みんなで公平に分配」

 協同労働の組織は、NGONPO(非政府団体/非営利団体)とは違う。その大きな違いは「利益を生み出すことができる」ことだ。例えば「のはら園」は、子供たちと保護者のために存在する。重度障害の子と365日一緒の保護者にとって、一時でも子供を預かってくれ、悩みを聞いてくれる場所が欠かせない。学校にある一般的な放課後児童クラブでは対応の難しさから断られることが多かったのだ。

 運営では、利用料が発生し、管理費や職員の給料も必要だ。また職員や保護者は、この施設のために「出資」した人である。だから、のはら園の経営はみんなで意見を出し合いながら行われる。出た利益は事業継続の積み立て以外は組合員に公平に配分される。給料も出資額や能力に関係なく、みんな一緒。給料な一律の給料に、不満もでるが、どんな人も一人の人間として話し合って、理解し合うそうだ。

 

「強くない」人のための居場所をつくる!

 私たちが生きる社会は、競争主義がはびこり、勝者と敗者が住みわかれる。勝ったものはより高い地位と富を獲得し、負けた者は自己責任として動かされる側になる。そんななか「自分も勝者になりたい、勝ち続けたい」と競争社会を生きたい人はそう生きていけばいい。しかし、そんな働き方はいやだという人、競争社会で生き場を失った人、競争社会で生き抜く力がない人の居場所はどこにあるのだろう。そんな人の居場所が「協同組合」だという。例えば、障害を持つ人は、成果主義の世界で働くのは困難が伴う。障害者手帳があってもなくても、みんなが一緒に働き、同じ給料をもらう。自分のしたいことができる、差別なく働ける、目的は違ってもこの働き方を選択した人たちはそれぞれ生きがいを持って働いている。道はいくらでも転がっているのだ。そんな働き方、生き方の一つが「協同労働」のかたちであった。

 

「場所を作るだけで、居場所になっていく」——助けることで助かる、の不思議

 ワーカーズが運営する那須塩原市のらくらくオアシスでは、元気な高齢者が高齢者を助ける「らくらくサポーター(生活支援)」という助け合いのかたちができている。買い物、ごみ出しなど地域の中で支え合いが成り立っているという。交友の広い女性が中心になりがちの組織が多い中、ここでは男性も元気だ。高齢者をサポートするなら「介護の勉強をせねば」と、養成講座を開始した。退職者の男性たちは、毎週集まりを開き、話し合いや勉強会、さらにサポーター募集の広報活動まで行う。パソコンでちらしづくりも担い、自分たちで介護を学びながら支援を行う。ある女性は、那須に移住してきて友達との出会いのきっかけになり、最近では自作の手芸品で、マルシェで販売もしているという。小白井さんがセンターに行くと、いつも誰かしら来ていて、サポーターの居場所になっているという。ワーカーズ側が指示するのではなく、自主的な運営が行われているのだ。「ワーカーズは仕組みを作るにすぎない。あとはサポーターが自らの手で居場所を作っていく、それが協同組合の目指すかたちだ」と小白井さんは考えている。

 

「新たな労働」の選択肢としての協同労働

 労働者協同組合は「いいとこどりの組織だ」といわれるようだ。「経営者だけが経営に関与するのではなく、労働者側も経営に参加でき意見を言える関係は、どんな組織であれ必要な要素だ」と小白井さんはいう。

 組織には、NGONPOのような非営利組織も、株式会社のような営利組織も、労働者協働組合のような「営利が優先ではないが利益も確保できる」組織もある。お金を稼ぎたい人、体が弱く働けない人、障害を持っている人、「やりたい」がある人、多種多様な人がいるなかで、社会の構成員みんなが組み込まれる「働き方」が増えてもいい。「協同労働」をあなたの生き方の選択肢に含んでみたらどうだろう。(鈴木花梨)

 

 

 

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