十人十色の学びがここに。山のようちえんの自然教育

4月11日のみんながけっぷちラジオ。今回は、鹿沼市中粟野で「山のようちえん」をやっている、代表の山崎恵(やまざき・めぐみ)さんと保護者代表の牛山ミキ(うしやま・みき)さんに話を聞いた。

 

山のようちえんに足を踏み入れてみると、その名の通り360度山に囲まれていた。情趣ある建物の奥ではヤギたちが穏やかな表情で迎えてくれた。この場所はもともと山崎さんの住居だった。「偶然の出会いがいくつも重なって、今の山のようちえんが始まりました」という。

 

「一般の幼稚園で、ウチの子は活かされるのか

きっかけは、友人関係にあった牛山さんの一言だった。

「一般の幼稚園に通わせても、我が子の持っている可能性が100%生かされないのではないか」と不安だった牛山さん。山崎さんに「ここを自然教育の場として使わせてほしい」と提案したという。ちょうど山崎さんも「この場所に人を集めてみたい」と考えていたこともあり、そのまま山のようちえんの開園に至ったという。

「けもの道探検」

山のようちえんの1日は、具材を各自で持ち寄ったお味噌汁作りから始まる。野菜は自分たちで切り、味噌も自分たちが作ったものを使う。山のようちえんのみんなで作ったお味噌汁である。子供たちはおにぎりとお味噌汁を手に山へと向かう。山の中では遊び方は無限大。

「ツルにぶら下がったり、けもの道を見つけて通ってみたり。子供たちと山を歩くのは楽しいですよ」と山崎さん。既存のおもちゃは遊び方が決められているが、山の中では子供たちが自分たちで遊び道具を見つけ、自分たちで遊び方を考えていく。一見危なっかしいと思っても、口を出さずに見守っていると子供たちは自分の力で山を登っていく。山のようちえんでの1日を通して、子供たちは自分で考える力を養っていく。「山のようちえんでは、自然の中で自由に過ごしていくことで、今しかもっていない感性を好きに出して過ごせる。行かせてよかったなと思っています。」と牛山さん。

 

山のようちえんの新たな挑戦 ―引っ越しと小学部誕生―

2017年から5年以上続いてきた山のようちえんだが、今年引っ越しをするという。山崎さんが地道に空き家を探し回り、見つけたのが「糸杉まなびの家」である。少し山から里に出てきた感じだ。

引っ越しの準備中に訪問させてもらった。昔ながらの古民家。蔵の中を覗いてみると、子供たちが塗った壁や秘密基地など、子供たちの姿が今にも浮かんでくるような光景がところどころに見られた。

「ここではみんなでお味噌汁を作って、こっちは音楽スタジオにしようと思ってるんです」。山崎さんは引っ越した後の未来を想像しながら、楽しそうに語ってくれた。

また、引っ越しのタイミングで新しく小学部が開設された。牛山さんの子どもが小学生になって少し経った頃だ。公立の小学校に通い始めて、ある変化に気づいた。「していいかどうか全部聞くようになったんです。それが寂しく感じました」と牛山さんは言う。公立の小学校での生活になじみ、自分で考える力が失われていくことに危機感を覚えた。そこで、子供たちが自分たちで考えてプロジェクトに取り組む、「プロジェクトベース」の小学部が作られた。椅子を作ったり、シロップを作ったり、活動内容は幅広い。

新たな土地で子供たちは何を感じ、何を学ぶのか。これからも山のようちえんから目が離せない。